研究課題/領域番号 |
11J02580
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
河地 結花 (鈴木 結花) 東北大学, 大学院・医工学研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 触覚 / 聴覚 / 感覚間相互作用 / 質感 |
研究概要 |
本年度は、接触音を模して作成した聴覚刺激における残響減衰時間の操作が、物体に知覚される「硬さ」に影響を及ぼすことを確認するとともに、聴覚情報が感覚レベル、判断レベルのいずれの段階で硬さの判断に影響を及ぼすのかを検討した。実験では、比較的硬いシリコンおよび柔らかいシリコンを用いて硬さの弁別課題を行うとき、シリコンへの接触に同期して減衰時間の長い音または短い音が提示された。その結果、聴覚刺激の影響は、シリコンの硬さに依存せず、減衰時間の短い音の影響は感覚レベルで、減衰時間の長い音の影響は判断レベルで観察された。また、粗さ知覚とは異なり、硬さ知覚は触覚情報と聴覚情報の整合性に影響を受けにくいことが実験によって示された。 従来の多くの研究では、物体に知覚される硬さが聴覚情報によって硬い(または柔らかい)方向へ変容し得るか、あるいは、異なる材質に感じられるかという観点から検討がなされてきた。しかし、本研究では、聴覚情報が硬さ知覚に影響を及ぼす処理段階が感覚、判断の両段階にわたることを明らかにした。ただし、硬さ知覚において聴覚情報によるクロスモーダルな影響が生じる処理段階は、硬さの処理に要する時間と聴覚刺激の持続時間との関係に依存することが示唆される。この研究成果は来年度に開催される国際学会で発表する。 さらに、質感知覚を行うときには触運動が必須となることに注目し、この運動の知覚に聴覚情報が影響を及ぼす可能性について検討した。触運動を知覚する際に振動刺激を時間的に操作して提示することによって(感覚内操作)、また、聴覚刺激を時間的に操作して加えることによって(感覚間操作)、運動知覚が変容することを報告した。このとき、感覚内(触覚)と感覚間(聴覚)の時間操作によって触覚運動知覚が変容し得る時間特性が異なることを明らかにした。これらの知見は国際学会および国内学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
触感を構成する要素のうち、「粗い-滑らかな」とともに主要な構成要素である「硬い-柔らかい」の次元について聴覚情報の影響を検討することで、触覚情報と聴覚情報の時間的要因が、多感覚情報処理における規定因としてのみではなく、感覚間相互作用の生じる処理段階に関わることを示すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
物体の硬さ知覚において聴覚情報の影響が生じる段階を、触覚による硬さ知覚に要する時間と、聴覚刺激の持続時間との関係から予測可能にすることを目指すとともに、今後は、触覚の情緒的側面に聴覚情報が及ぼす影響について検討する。
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