研究課題/領域番号 |
11J02637
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀田 彰一朗 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | X線結晶構造解析 / 鉄輸送体 / ABCトランスポーター |
研究概要 |
本研究では、鉄輸送体の三者複合体による結晶構造解析と基質認識メカニズムの解明を目的としている。既にTTHA1628、TTHA1629の発現、精製系は構築していたが、三者複合体の構造解析に必要なTTHA1628の構造解析については未着手であった。本年度の成果として、TTHA1628の発現、精製法、鉄結合能の確認、および、鉄存在下、非存在下における構造解析を挙げる。また、三者複合体構造解析を見据え、TTHA1628-TTHA1629二者複合体の調製を行った。詳細については以下に記す。 TTHA1628の発現、精製法、鉄結合能の確認および構造解析 三者複合体の結晶化に必要な基質結合サブユニットTTHA1628の調製のため、TTHA1628の発現、精製法の確立を行った。次に、ICP-AESを用いてTTHA1628に選択的に結合している金属元素の同定を行った。その結果、TTHA1628が鉄イオンを選択的に結合していることを実証した。このことから、アミノ酸配列から推定鉄輸送体と注釈がつけられていたTTHA1628-TTHA1629-TTHA1630が、確かに鉄輸送体として働くことを実証した。 次にTTA1628に関して鉄結合型、鉄非結合型の結晶構造を最高分解能1.8オングストロームで決定することに成功した。両者の構造において顕著な構造変化は見られなかったが、DLSやSAXSによる解析から、溶液中では異なる構造を取っている可能性が示唆され、基質依存的な構造変化の可能性が示唆された。 TTHA1628-TTHA1629の複合体調製 上記の発現法で調製したTTHA1628と既に精製法を確立しているTTHA1629に関して結合能を調べるためSPR法を利用して相互作用解析を行った。その結果、鉄結合型TTHA1628がTTHA1629と解離定数10-20uMオーダーで相互作用する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三者複合体の構造解析には、基質結合サブユニットであるTTHA1628の構造解析が必要不可欠であり、その鉄存在下、鉄非存在下において高分解能でX線結晶構造解析に成功した。またSAXSやDLSの解析から鉄の認識によって構造変化が示唆された。これらの構造情報と、三者複合体におけるTTHA1628の構造情報と比較することにより鉄輸送メカニズムの解明が期待される。以上の理由により、(2)おおむね順調に進展している。を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策に関して、上記の結果を踏まえ三者複合体の構造解析を目指す上で克服しなければならない次のステップは結晶化である。現時点において膜貫通サブユニットにおける最高分解能は7オングストローム程度であるが、それ以上の分解能データは現在までに得られていない。現在、高品質の結晶得るためにさまざまな技術が提唱されている。そこで、膜タンパク質の結晶作製について最先端の技術を取得するため、海外渡航制度を利用し膜タンパク質の構造解析において実績のある海外施設にて研鑽を積む予定である。この海外渡航制度によって、本研究課題である鉄輸送体の三者複合体の結晶作製、および高分解能データの取得に重要な知見が得られると考えており、また、合わせて膜タンパク質の構造解析に関して最先端の技術と知識が得られると確信している。
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