研究課題
分裂酵母の減数分裂に必須な長鎖non-coding RNAであるmeiRNAは、自らの遺伝子座に凝集し、ドット状の構造体を形成して機能する。昨年度、減数分裂特異的な転写産物の分解に関わる因子Mmi1がmeiRNAの発現調節に寄与していること、及び、Mmi1の補助因子であるRed1がmeiRNAの局在化に関与していることを明らかにした。今年度は、Mmi1/Red1とmeiRNAの局在化との関係について詳細な解析を行った。野生株において、Mmi1とRed1は核内で複数個のドットとして観察され、両者は共局在している。このMmi1/Red1ドットのうちの1つが、meiRNA遺伝子座に局在していることが分かった。Mmi1/Red1ドットのmeiRNA遺伝子座への局在は、meiRNAの転写が低下する変異体では観察されなかった。meiRNAの局在をmmi1変異体で観察したところ、meiRNAのドットは検出されなかった。この時、Red1はmeiRNA遺伝子座から離れていた。一方red1破壊株では、通常1つだけ観察されるmeiRNAのドットが複数個になり、meiRNA遺伝子座から離れていた。その複数個のmeiRNAドットにはMmi1ドットが共局在していた。以上の結果から、meiRNAのドット形成機構1に関して次のようなモデルが考えられる。まず、転写されたmeiRNAにMmi1が結合し、meiRNAが束ねられドット化する。Mmi1はRed1と複合体を形成しており、Red1はmeiRNA遺伝子座と直接的ないし間接的に結合し、meiRNAドットをmeiRNA遺伝子座に留める。よって、meiRNAはmeiRNA遺伝子座に単一のドット状構造をとることが出来る。
2: おおむね順調に進展している
今年度はmeiRNAのドット形成に関わる因子を同定し、その機能を解析することが目標であった。昨年度に取得したmeiRNAのドット形成に関与する因子Mmi1やRed1の変異体解析から、Mmi1/Red1がmeiRNAとmeiRNA遺伝子座を繋ぎ留めているということが示唆された。よって、meiRNAのドット形成機構に関わる因子の同定とその機能の解明はおおまかに完了し、目標は達成された。
今年度の研究成果から、meiRNAのドット形成機構について大まかなモデルを立てることができたので、今後はこのモデルの検証を行う。まず、Mmi1と結合できないmeiRNA変異体、Mmi1と結合できないRed1変異体などを作製し、meiRNA/Mmi1/Red1の三者の局在の観察を行う。また、Red1とmeiRNA遺伝子座の結合が直接的であるか間接的であるかについて検討する。更に、Mmi1のターゲットとなっている他の転写産物の局在を観察し、転写産物のドット形成が起こるかどうか、meiRNAと同様の機構かなどについても検討していきたい。
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EMBO Journal
巻: 31 ページ: 2296-2308
10.1038/emboj.2012.105.