研究課題/領域番号 |
11J02671
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
清家 泰介 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 分裂酵母 / 接合フェロモン / 受容体 / 生殖隔離 |
研究概要 |
本研究は分裂酵母(S.pombe)の接合フェロモンとその受容体に突然変異を導入することにより、変異型同士で認識可能になった新規接合型ペアを創出することを目的とする。これらが野生型ペアから完全に隔離されていれば、生殖隔離を実験室レベルで解析することが可能になる。 過去に第1段階として、9アミノ酸からなるフェロモンに網羅的に突然変異を導入し、全152種のミスセンス変異体のうち、35種において接合能が欠損することを見出した。前年度では、第2段階として変異型受容体(GPCR)に突然変異を導入し、大規模なスクリーニングにより新規接合型ペアを複数取得した。平成24年度では、この得られた新規接合型ペアの特異性を詳細に調べた。その結果、わずかではあるが得られた変異型受容体は、野生型フェロモンに対する認識能が残っていた。そこで、さらにこれらの変異型受容体を鋳型に、部位特異的に突然変異導入を行い、野生型フェロモンに対する認識がなくなっているが、ある特定の変異型フェロモンを認識するものを作製することに成功した。 これらの新規接合型ペアはフェロモンと受容体の特異性が変化することにより、野生型細胞とは交配できないことを観察している。適切なフェロモン受容が生殖のための障壁となっていることは、フェロモンを分泌できない細胞が合成フェロモンの十分な量の添加によっても、接合能が回復しない事実から明らかになっている(現在論文PLoS ONE誌に投稿し、現在レビュアーの指示に従って改訂中)。このことはフェロモン/受容体間の特異性の変化だけで、生殖隔離が引き起こされることを意味する。現在、遺伝学的にもこれを証明するため、最終段階として両生殖群間の間で遺伝子の混合が生じないことを調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初には予定になかったが、S.pombeの近縁種S.octosporusとのフェロモン/受容体遺伝子のキメラを作製することにより、フェロモンおよび受容体の認識特異性に重要なアミノ酸/ドメインを特定することに成功した。この成果は両者のフェロモンがお互いに別の種には機能しないことは、これらの種ではフェロモン系による生殖隔離が生じている可能性を強く示唆する結果である。
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今後の研究の推進方策 |
分裂酵母が持つ3本の染色体の異なる位置に薬剤マーカーを組み込み、野生型細胞と新規接合型細胞間の接合による組み換え頻度を定量的に調べる。これらの遺伝的マーカーが異なる生殖群を越えて混じり合わないことを示すことで人為的生殖隔離を証明したい。適合したペアの新しい生殖グループが母集団中に発生することで、それらが元の野生型集団から生殖隔離され、独自の進化を起こすステップを詳細に実験室レベルでモニターしたいと考えている。
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