研究概要 |
本研究は分裂酵母(S. pombe)の接合フェロモンとその受容体に突然変異を導入することにより、変異型同士で認識可能になった新規接合型ペアを創出することを目的とする。これらが野生型ペアから完全に隔離されていれば、生殖隔離を実験室レベルで解析することが可能になる。 前年度では、接合能欠損を持つ35種の変異型フェロモンを認識できるようになる変異型受容体を、大規模なスクリーニングにより4種単離した。それら受容体の変異点はF204L, F214S, E249F, E249Wで、それぞれ変異型フェロモンV5W, Y7A, M8W, M8Wを認識できるように変化していた。しかしこれらの受容体は、野生型フェロモンもまた認識でき、完全な生殖隔離を生じていなかった。そこで平成25年度では、部位特異的にF204, F214, E249残基に網羅的に変異導入を行った。それらを元に再度スクリーニングを行った結果、3組の野生型から隔離された新規接合型ペアの作製に成功した。 これらの新規接合型ペアが野生型ペアとは生殖隔離されていることを示すために、染色体上の異なる部位に薬剤耐性遺伝子を挿入し、その薬剤マーカーの動きを追跡した。そこで野生型ペアと新規接合型ペアの合計4種(それぞれ異なる薬剤耐性遺伝子を付与)を混合し、二重薬剤耐性クローンの出現頻度を求めた。その結果から両ペア間の遺伝子交換はほとんど生じていないことが明らかになった。これらの成果を現在、論文に投稿準備中である。また分裂酵母フェロモンが接合の際、大きく二つの役割を持っていることを明らかにした。この事実は、分裂酵母においてフェロモンの適切な受容が姿生殖のためのバリアーになっていることを意味している。これらの結果は、平成25年7月に論文PLoS ONE誌にアクセプトされた。
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