採用の最終年度である今年度は、これまで得られた研究結果を取りまとめ、今後の研究の礎とする総仕上げを行った。はじめに、研究課題にも挙げられている「浮上磁場MHD数値計算」の結果をまとめて英文査読誌に発表した。これにより、太陽の活動領域(黒点領域)を形成する磁束について、磁場強度やねじれ量といった物理量に理論的な制約を与えることができた。さらに、数値計算結果から予想される浮上磁場の「減速運動」について日震学観測を実施し、成果を英文査読誌に発表した。観測結果は数値計算の予測ときわめて良く一致するものであり、本成果から、数値計算を観測的に検証することができたと言える。太陽活動領域における最大の特徴は、太陽系内最大の爆発現象である「フレア」を生じることにある。今年度は、申請者がこれまで行ってきた浮上磁場研究を元に、フレア理論までを含む発展的な研究を行った。はじめに、非常に活発な太陽活動領域NOAA 11158について、そのフレア発生機構を観測的に解明し、英文査読誌として成果を発表した。さらに、上述の浮上磁場数値計算を用いて、NOAA 11158の形成過程を再現し、フレア発生機構(=どのようにフレアが発生したのか)のみならずフレア活動領域形成過程(=なぜこの活動領域でフレアが発生したのか)までを解明した。本研究は英文査読誌に発表された。以上のように、今年度は浮上磁場数値計算の総まとめを行うとともに、浮上磁場の観測的研究や太陽フレア理論に関連する発展的な研究まで行うことができた。成果は査読論文のみならず、招待講演を含む国内・国際学会で発表された。
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