研究概要 |
本研究では,まず,エマルジョンPCRとmRNAディスプレイ法を組み合わせた試験管内進化法でFab抗体ライブラリーから目的の抗体が取得されるかどうかの確認を行った.抗p53Fab抗体にランダム変異を導入したライブラリーから結合活性が上昇した変異体を取得することを目指した結果,野生型の抗p53Fab抗体より高い結合活性が持っていた変異体を得ることができ,ライブラリーからでも目的抗体が取得できることがわかった.次に,分子センサーとして機能する二重特異性抗体の元となる抗体を作製した。抗フルオレセインFab抗体は既に作製済みだったので,残る2つの抗エストラジオールおよび抗CEAのFab抗体遺伝子を作製した.抗エストラジオールと抗CEAのV_HとV_Lドメインをコードする遺伝子を化学合成により作製し,PCRによりCH_1とC_Lドメインの遺伝子を連結させることで,Fab抗体の遺伝子を作製した.続いて,分子センサーとして機能する二重特異性を取得するために,2)で述べた抗体を基にキメラ抗体を作製し,ランダム変異を導入した変異体ライブラリーを作製した.立体構造情報を元に各抗体の抗原との結合の仕方を考慮し,H鎖を抗エストラジオールまたはCEA由来,L鎖を抗フルオレセイン由来のキメラ抗体を作製した.そのキメラ抗体を基にランダム変異を導入して,変異体ライブラリーを作製した.現在,このライブラリーを用いて,フルオレセインに結合しエストラジオールによって競合的に溶出される抗体のセレクションを行っている. また,確立したエマルジョンPCRとmRNAディスプレイ法を組み合わせたセレクション手法を発展させることによって,新たにタンパク質/RNA複合体のセレクション系の構築に着手した.分子ディスプレイ技術によってタンパク質/RNA複合体のセレクションを行うのは本研究が初めての事例である.
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今後の研究の推進方策 |
ライブラリー作製方法やセレクション方法を検討しながら,現在進行中の分子センサーとして機能する二重特異性のセレクションを引き続き進める.また,エマルジョンPCRとmRNAディスプレイ法を組み合わせたセレクション手法を発展させることによって,新たにタンパク質/RNA複合体がセレクションできることを見出したので,とちらの方も研究を進める.
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