研究課題/領域番号 |
11J02728
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
藤井 俊博 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 極高エネルギー宇宙線観測 / 空気シャワー / エネルギースペクトル / 質量組成 |
研究概要 |
宇宙極高事象を解き明かす手段として、宇宙空間を飛び交う高エネルギーの粒子(宇宙線)の観測が非常に注目されている。現在、10の20乗電子ボルトを超える極高エネルギー宇宙線が観測されており、そのエネルギーは人類最大の加速器で達成可能な1粒子あたりのエネルギーよりも8桁も大きい。だが、このような巨視的なエネルギーを持つ宇宙線がどこで加速され、どのように地球に到来するのかは明らかになっていない。 本研究の目的は、宇宙線の起源を明らかにする上で最重要な極高エネルギー宇宙線スペクトルの測定である。10の17乗電子ボルトから10の20乗電子ボルトを越える幅広いエネルギーでのスペクトルを測定するため、北半球最大検出面積を誇るテレスコープアレイ大気蛍光望遠鏡の測定データを単眼で解析している。 当該年度の研究成果としては以下のことが挙げられる。 1、大気蛍光望遠鏡による観測データの単眼解析によって、宇宙線のエネルギーや到来方向を再構成する解析手法を確立した。 2、宇宙線候補事象の選別方法を確立した。 3、空気シャワーシミュレーションから、単眼解析の精度を評価した。 4、スペクトルを求める上で分母となる幾何学的因子をモンテカルロシミュレーションから見積もった。さらに、一次宇宙線が陽子あるいは鉄であった場合、幾何学的因子がどの程度変わるかを評価した。 5、独立に開発された解析ソフトウェアとの比較を行い、誤差の範囲内で結果の一致を確かめ、解析の信頼性を高めた。 6、単眼解析による極高エネルギー宇宙線の質量組成解析に挑戦し、質量組成が判別できることを確かめた。 以上の研究内容を、国内の物理学会や研究会をはじめ国際会議でも報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
極高エネルギー宇宙線スペクトルを求める上で必要な解析手法、精度評価やスペクトルを求める上で分母となる幾何学的因子の計算手法を確立した。さらには、独立な解析とのクロスチェックで解析の信頼性を高め、計画になかった極高エネルギー宇宙線の質量組成解析についての研究も行っており、これらの成果は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
高統計なエネルギースペクトルや質量組成を測定するためには、定常観測によってより多くのデータを集め、各種較正データを用いて解析することが必要である。まず、それらのデータ保存領域を確保するため、ハードディスクを増設し、データ保存領域を拡張する。 次に、シミュレーションを用いた精度評価や幾何学的因子計算の統計量をあげ、シミュレーションにおける統計誤差をできるだけ小さくすることが重要である。またより多くの測定データを早く解析するために、高性能な計算機が多く必要である。そのため、計算機を増設し、膨大な計算量を短期間で終わらせ、より精度の高いエネルギースペクトルの測定を目指す。
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