今年度も引き続き、大腸菌DNA複製再開始因子であるPricの構造および機能解析を行なった。また最終年度であり、これまでの研究成果を論文にまとめるための解析を中心に行ってきた。 C末ドメインに繰り返し存在する疎水性残基が多量体形成に関与している可能性を考え、それらを親水性残基へと置換した変異体を作製し、解析を行なった。その結果、野生型と比べて変異体の多量体形成が低下しており、その繰り返し存在する疎水性残基の多量体形成への関与が示唆された。この結果とこれまでに得ているDNA結合に関する結果とをまとめて論文として報告した。 これまでPricの立体構造に関する報告はなく、私は、限定分解により得られたPricのN末ドメインに関してNMRを用いた立体構造の決定に世界に先駆けて成功している。さらに、N末ドメインの弱いDNA結合能およびそれに伴う多量体形成を示す結果が得られ、まとめて論文として報告した。 さらに、C末ドメインに存在する塩基性残基および芳香族残基に関して22種類の変異体を作製し、詳細なDNAとの相互作用解析を行った。その結果、9つの変異体においてDNA結合能が低下した。また、様々なDNA反応に関わる重要な因子である一本鎖DNA結合タンパク質SSBが塩基性残基および芳香族残基を介して関連因子と相互作用することが知られており、Pricにおいても上記の22種類の変異体のうち5つの変異体においてSSB結合能が低下した。さらに、このDNA結合およびSSB結合の関連性を詳細に解析し、現在論文にまとめて投稿中である。
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