研究概要 |
mRNA品質管理機構の一つであるNGD(No-Go-Decay)は人工的な二次構造等により翻訳伸長が阻害されたリボソームを認識し、その配列近傍でmRNA分子内切断を引き起こす。Dom34:Hbs1複合体はNGDにおいて翻訳伸長が阻害されたリボソームを解離することで、mRNAの分子内切断(NGD)を促進すると考えられてきた。昨年度、我々は、Dom34:Hbs1複合体が、NGDとNSD(Non-Stop decay)の2つの経路において、NGDの5'側切断断片(5'側NGD中間産物)及び、ノンストップmRNAを分解するために必要であることを明らかにした(Tsuboi et al., Mol. Cell, 2012)。また、本年度共同研究において、Dom34:Hbs1複合体の細胞生理学的な意義として、細胞小器官に局在するタンパク質のmRNAがノンストップmRNAとなってしまい、mRNAの3'末端でリボソームが停滞し、トランスロケータをふさいでしまうのを解離することを明らかにした(Izawa et al.,Cell Reports,2012)。 一方で、これまでmRNAの二次構造や連続したレアコドン、塩基性アミノ酸の連続配列がNGDを引き起こすことが報告されているが、細胞内におけるNGDの標的mRNAは明らかにされてこなかった。本年度の研究では、CBP1 mRNAがNGDの細胞内標的mRNAであることを見いだした。CBP1は核にコードされ、ミトコンドリアに輸送されるタンパク質である。CBP1 mRNAにおける分子内切断には、ミトコンドリア局在化シグナルが必要であり、また、リボソームが652-726nt領域のステムループ構造を翻訳することでその二次構造の3'側が切断された。CBP1 mRNAはミトコンドリアに輸送されることで分子内切断を受けると考えられ、CBP1 mRNAの品質管理機構にmRNA局在化が重要であることが示唆された。我々は、CBP1 mRNA同様にミトコンドリアに局在するmRNAに特に注目し、NGDの有無を網羅的に検証している。本研究は、mRNA品質管理機構とmRNAの細胞小器官への局在に有意な相互関係があることを示唆する初めての成果である。
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