研究課題/領域番号 |
11J02839
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
中畑 義久 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 神経伝達物質 / 培養神経細胞 / 抑制性シナプス / グリシン受容体 / 脊髄 / 免疫染色法 / パッチクランプ法 / FRAP法 |
研究概要 |
単一シナプスレベルでの神経回路編成モデルとして、本研究では神経伝達物質の変化に伴うシナプス後膜グリシン受容体の局在とその機能的変化を検討している。一昨年度実施した免疫染色法および電気生理学的な結果を踏まえ、昨年度はシナプス後膜におけるグリシン受容体の局在変化に焦点を当て、新たに2つの生細胞イメージング技術を用いて、時空間的なダイナミクスの検討を行った。 具体的には、マウス脊髄由来の初代培養細胞を対象とし、細胞膜上のグリシン受容体を特異的に可視化するDNAコンストラクトを作製、遺伝子導入した。その上で、光槌色後蛍光回復法(FRAP)によって、数分間における受容体の時空間的移動を解析した。すると、神経伝達物質グリシンによる受容体の活性を阻害した群では、対熊群に比べ受容体の回復率が早かったことから、細胞膜におけるグリシン受容体の移動性は、受容体自体の活性に依存していることが示唆された。加えて、グリシン受容体阻害剤を除去後1時間経過した群において同様の測定を行ったところ、対照群と同程度に移動性が減少していたことから、成熟した神経細胞であっても、受容体が活性化して1時間程で受容体の時空間的動態が変化し得ることが明らかになった。 そこで次に、側方拡散する受容体粒子を特異的に標識し、シナプスにおける受容体の移動性を詳細に検討するため、量子ドットイメージング法を用いてグリシン受容体粒子の動きを追跡した。すると、グリシン受容体は活性依存的にシナプスに停留することが明らかとなり、成熟神経細胞においても、受容体の活性化によって1時間以内にシナプスに停留しやすくなる可塑性を見出した。現在は、薬理学的手法を合せてこれらの現象を制御する細胞内メカニズムを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究およびその成果はおよそ当初の計画通り進んでいる。細胞膜上のグリシン受容体を特異的に可視化するDNAコンストラクトの作製やそれを用いた観察手法の開発など、当初の計画になかった新たな工夫を加えて、より詳細な動態解析も行っている点は、当初の計画以上の進展と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで明らかになった現象を制御する細胞内メカニズムを検討するとともに、シナプス前終末における発達をミミックするモデル系を完成させ、個体発達の過程をより反映した系で検討したい。
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