研究課題
高分子メモリデバイスは、その成形性、柔軟性の高さ、用いる材料による特性の調節が可能であることから、現行の無機半導体メモリに取って代わるデバイスとして大きな注目を集めている。これまでにメモリ特性を示す高分子材料は数多く報告されてきているものの、その一次構造と発現するメモリ特性の関係は未だ不明な点が多く、この関係性は高分子メモリ材料の研究開発が抱える最も大きな課題である。即ち、メモリ特性を調節できるような高分子材料の分子設計指針を構築することが、本研究領域において最重要の位置にある。本研究では、一貫して材料の一次構造と発現するメモリ特性の関係性の解明および揮発性の調節を可能にする分子設計指針の構築を目的としている。揮発・不揮発性の調節を行うためには、ポリマーに電圧を印加させたときに誘起される励起状態(電荷移動錯体 ; CT complex)の安定性を調節することが必要である。一般的に、電子供与性のドナーと電子受容性のアクセプターがポリマー鎖中に存在すると、電圧を印加した際に容易にCT complexは形成されるものの、電場を取り除くとこのCT complexは不安定であるために元の基底状態に戻ってしまう。昨年度、大きな共鳴構造を導入することで、分子設計を通してCT complexの安定性の調節、延いては発現するメモリ特性の調節を可能にした。しかし、本指針に基づく材料開発の例は非常に少なく、これをより確立したものにする必要がある。そこで、本年度の研究では下記の大きな共鳴構造を有する種々の低分子および高分子材料を合成し、これら材料がメモリの揮発・不揮発性を普遍的に調節することが可能であるかを検討した。結果として、分子設計を通して目的通りの特性を発現させることに成功し、揮発・不揮発性を作り分けるための明確な分子設計指針の構築が可能になったと言える。これは、異なるデバイス構造においても適応できることから、普遍的な分子設計指針であるという結論を見出した。
(抄録なし)
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