研究概要 |
平成23年度は第一に,第二言語習得における語意の再編成過程,第二に言語の持つ音象徴構造における普遍性と個別性及びそれが語意習得に与える影響の二点について研究を展開した. まず,第二言語習得における語意の再編成過程については,「持つ/運ぶ」という動作を非常に細かく動詞で呼び分ける中国語動詞を第二言語学習者がどのように学ぶのかを実験的に調査した.ここでは日本語,韓国語,英語を母語とする中国語学習者が様々な「モノを持つ」動作を中国語動詞でどのように呼び分けるかその学習過程を実験的に調査した.結果として,高度に中国語に熟練し日常のコミュニケーションには殆ど支障がないレベルの学習者でも,語を運用する際に自身の母語における語彙を援用して用いようとする傾向がある明らかにした.更にこの結果と前年度までの子どもの語意習得の結果とを定量的に比較分析し,子どもの場合は知覚的に顕現な特徴から名付けを進めていく点が学習者とは異なることを明らかにした. これらの成果は,人間の語意習得一般における学習過程の特徴を明らかにし,第二言語習得における語意の教授法について重要な指針を与えることができると考えられる. 次に,語意習得に関する音象徴の効果に関する研究については,類像性の程度が異なる音象徴語を子どもがどのように理解するかを実験的に調査した.結果,子どもは類像性の高い音象徴語(擬音語)を低い音象徴語(擬態語,擬情語)よりも理解しやすいことを明らかにした.また,言語獲得における音象徴の効果と並行して,音象徴における音と意味との結びつきのうち,どの部分が言語個別的でどの部分が言語普遍的であるのかを日英母語話者に対する産出実験を通し実証的に検証した.結果,両者に共通する特徴として,「重さ」と「有声音j「母音」を積極的に結び付ける傾向があること,それ以外の結びつきについては言語個別的であることを明ちかにした.
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度の推進方策としては平成23年度に収集・分析した研究成果の公開を第一に考える.特に第二言語習得における語意習得,第一言語習得における音象徴の効果,音象徴の言語個別性及び言語普遍性の三点については初年度のデータをまとめ24年度中に雑誌論文への投稿・採択を目指す. また上記の成果の公開活動と並行し,更に子どもの語意獲得研究について,九月,十月をめどにデータ収集を開始する.
|