研究概要 |
正常および異常赤血球分化・成熟制御機構やその分子基盤を明らかにすることで、不応性貧血の改善につながる新規治療法の開発が期待できる。昨年度に引き続き、正常終末期赤血球造血の分化成熟制御分子の探索および機能解析を行った。具体的には、赤血球造血が盛んな胎仔肝臓をGata1-GFPトランスジェニックマウスより採取し、(1)分画化した終末期Ter119+赤血球と特性解析(2)DNAマイクロアレイ後の候補分子の絞りこみ(3)候補分子の機能解析を行った。 成果;(1)GFP発現(Gata1発現を反映)及び核染色マーカーXの組み合わせにより、Flowcytometry法で終末期Ter119+赤血球(Sca-1-c-Kit-CD71-Ter119+)を更に詳細に3群に分画化した(A群;Ter119+GFP+X+、B群;Ter119+GFP+X-、C群;Ter119+GFP-X-)。分画3群を用いてCD44,CD47,CD29の発現解析を行った。既報ではCD44,CD47,CD29はin vitro分化培養系での発現解析になのに対し、本研究では初めて生体由来の分化成熟細胞を同時に比較解析した点が新しい。(2)上述(1)の分画A,Bを用いたDNAマイクロアレイ解析後、最終分化成熟関連分子の絞り込みをqPCR法によるmRNA発現解析及びFlow cytometry法によるタンパク質発現解析を行った。細胞表面分子に注目した場合、最終候補として2分子Y,Z(特許[特願2012-182058]秘匿事項)を抽出した。これら2分子は既知の分子であるが、最終赤血球造血における役割は報告されておらず、極めて新規性が高いといえる。(3-1)上述(2)で抽出したYの機能解析を行うため、抗Yモノクローナル抗体を作製した。分子Yの細胞外ドメインを抗原部位として設計後、ラットに注射し、その脾臓細胞よりハイブリドーマを作製した(50クローン)。さらに細胞培養上清を用いてELISA及びFlow cytometryで活性が高い5クローンを選出した。5クローンの抗体精製まで終了した。(3-2)分子Yに対するリガンドを用いて、マウス胎仔肝臓細胞・マウス末梢血への添加実験を行い、分化成熟および細胞増殖における意義を検討中である。
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