当該年度においては、機能未知のF-boxタンパク質のうち、発現が非常に胸腺特異的であるFbxl12の分子レベルでの機能を明らかにすることに重点をおいてまずその基礎検討を行った。実験系の基礎検討として、ユビキチン化酵素の基質を同定する手法としての「インタラクション・プロテオミクス法」が正常に機能するかどうかを、既存の確立されたユビキチン化酵素-基質関係である、「HDM2-p53」を用いて検討した。 酵素活性を阻害する1アミノ酸変異を導入したHDM2と野生型のHDM2を培養細胞内で別々に過剰発現させ、それらの結合タンパク質を質量分析計により同定し、その差を解析したところ、変異型のHDM2で有意にp53との免疫共沈降量が増加しており、「HDM2-p53」の酵素-基質関係性を十分に再現することに成功した。この結果は、「インタラクション・プロテオミクス法」が遺伝子の多数を占めるユビキチン化酵素一般に適用可能であることを示唆する結果である。 この基礎検討の結果を受け、同様にFbxl12を用いてインタラクション・プロテオミクス法による解析を行ったところ、幾つかの基質候補を同定した。しかしながら、それらに対する培養細胞を用いた評価実験の結果、その中にFbxl12の基質は存在しないことが明らかとなった。この実験結果を受け、現在用いる細胞を従来使用していたHEK293T細胞から、ヒト白血病T細胞株であるJurkat細胞に変更し再実験を行っている。
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