研究課題/領域番号 |
11J03122
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤本 猛 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 徽宗 / 蔡京 / 謁見 / 君主独裁制 |
研究概要 |
今年度は宋代「君主独裁制」と密接に関わる皇帝との謁見制度について、特に一般官僚が順番に皇帝に対面できる制度である輪対・次対・転対制度について研究を進めた。政書などの編纂作業から制度の沿革を整理し直すとともに、謁見時に官僚が提出した上奏文を『国朝諸臣奏議』、『歴代名臣奏議』、『全宋文』、各人の文集等から拾い集め、その内容を吟味した。結果として、次対二転対は北宋から南宋にかけて維持されていたが、輪対は南宋に入ってから出現したもので、基本的には同じ性格を持つ制度であった。ただ大きく違ったことは、前者に比して後者の実施頻度が極めて高くなっていること、そして当時の官僚たちがこの制度に寄せた輿望が、後者の方がはるかに勝っていたことであった。定期的に皇帝と直接謁見できる南宋の輪対制度は、実際の政策採択率の低さにもかかわらず連綿と維持され続け、いわば皇帝への求心力維持装置としての役割を担っていた。以上の内容を2012年8月、中国開封で開催された国際学会において口頭発表を行った。またこれを文章化したものが、2013年中に出版される論文集に掲載される予定である。 さらに今年度の後半は、もう1つの課題につき検討を行った。一つは宋代における詔獄についてであり、これは皇帝からの詔勅によって開かれる臨時法廷のことである。謀叛などの重大案件が対象となったものだが、北宋後半においてはしばしば権臣宰相によって党争の道具となることが多かった。『宋史』刑法志や『宋会要輯稿』などの制度史料を使って詔獄の概要を吟味するとともに、官僚個人の文集によって具体的な詔獄関係者の動きを把握し、この特別法廷の中で皇帝と権臣宰相との相克関係の解明に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究目的は、前年度から引き続き、北宋末徽宗朝を中心とした宋代「君主独裁制」の再検討にあったが、これについては、皇帝と一般官僚とが謁見を行い、それによって皇帝が恩寵を示し、求心力を高めるという作用のあったこと、この制度が北宋から南宋にかけて大きく進展していたことを実証することができた。 またその成果を海外における国際学会で発表し、その報告書としての論文集に掲載することが許可されたことは、積極的な成果発信をなしえたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず今年度の後半において検討をはじめていた「詔獄」という詔勅による特別法廷の実際について、口頭発表により成果を公開する。また以前に発表した「宋代の殿中省」という論文をリライトし、これを8月に北京で開かれる国際学会にて口頭発表する予定となっている。さらに連年の課題でもある北宋徽宗朝に関する研究として、大観・政和年間における文化行政、特に明堂・封禅制度とそれに関わる特別官制について考察を行い、論文のかたちで成果発表をめざす。
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