研究課題/領域番号 |
11J03138
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
藤田 公二郎 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 国際情報交換 / フランス / 哲学 / ミシェル・フーコー / 主体化 |
研究概要 |
本研究の目的は、フランス現代哲学者ミシェル・フーコーの主体形成論、すなわち主体化の哲学を明らかにすることにある。本研究の見通しによれば、この主体化の哲学は、知と権力と倫理の各次元における主体化を問題としており、したがってそれは、主体化の論理学、主体化の物理学、主体化の倫理学の三つから構成されている。平成23年度では主体化の物理学を研究し、以下の二つの成果を上げた。 第一に学術論文の部分的執筆である。そこでは主体化の物理学を明らかにするために、最初にその基本概念、つまりフーコーの権力概念を明確化した。その後で、権力の次元において私たちがいかに主体化されているのかを明らかにした。この問題はフーコーにとって極めて重要であったにもかかわらず、実のところ彼自身は十分に体系的な議論を展開していない。本研究は、彼の断片的記述を網羅的に検討することにより、これまでにない理論的一貫性において当該問題を論じることができた。 第二に関連研究の発表である。上記の執筆作業を通じて三つの関連研究を提出した。一つ目は、英語論文「力と認識」である。これは、国際専門誌『フーコー・スタディーズ』に掲載される予定である。二つ目は、仏語発表「フーコーにおけるコギトの誕生」である。これは、フーコーの処女作『狂気の歴史』50周年シンポジウムでおこなったものである。この発表はまた、加筆修正の後、近く大会論文集に掲載される予定である。それゆえこれがつまり三つ目の発表である。 以上の通り本研究の成果は、第一に学術論文の部分的執筆であり、第二に関連研究の発表である。なお、平成23年度はフランスのパリに渡航し、専門機関フーコー・センターのF・グロ教授の下で研究をおこなった。現地はフーコー研究の中心地であり、そこで様々な国の研究者と交流をおこなった。この経験により上記の研究成果の質をより確かなものにすることができたように思う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、質的な面に限って言えば、当初の計画以上に進展している。というのも、研究課題の新資料を検討したり、海外渡航先で研究交流を進めたりすることで、研究内容をいっそう豊かにすることができたからである。だが反面そうした作業に時間を割いたため、学術論文の執筆が必ずしも十分でなく、研究は量的な面でやや遅れている。したがってそうした研究状況を総合的に判断すれば、上記の評価が妥当であるように思われる。
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今後の研究の推進方策 |
研究を推進するために研究計画の再点検をおこなう。すなわち、再度研究の目的を明確にし、その達成にとって必ずしも重要ではない作業の実施を保留にする。本研究の目的は、フーコーの主体形成論を明らかにすることである。当初の計画では、彼の主体形成論の特異性を際立たせるために、そのほかの思想家の主体形成論と比較検討することになっていた。しかしこの比較検討は、フーコーの主体形成論を理解するにあたり、たしかに有益な作業ではあるが、絶対に必要な作業であるとまでは言えない。したがってこの作業の実施をいったん保留にすることにより、研究目的の達成に直結するそのほかの作業に対していっそう多くの研究資源を割いてゆきたい。
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