研究課題
本研究の目的は「新規担持型Pd触媒(SAPd)を利用した立体的に多様な低分子化合物ライブラリーの構築」である。本年は、本研究のカギとなる担持型パラジウム触媒(SAPd)を用いるcis-ビニルヨードシクロプロパンと含窒素複素芳香環を有するボロン酸との鈴木-宮浦カップリング反応における基質適応範囲を検討し、マイクロウェーブ照射条件下において、設定した5種類の含窒素複素毒を有するすべての基質において、88%~7%の収率で目的物のカップリング体が得られることが分かった。この条件は、tarans・ビニルヨードシクロプロパンにおいても有効であり、cis体、trans-体それぞれについて5つの異なる複素芳香環を有する10個の化合物を得ることが出来た。さらに、これら10個の化合物を2段階の酸化によりカルボン酸へと変換した。さらに、これらのカルボン酸と9つのアミンとを縮合することによりアミドへと変換、続く分子内に存在する保護基の脱保護を液相コンビナトリアル合成を用いて一挙に行い、総計90種類の化合物を合成することで、化合物ライブラリーの構築を連成した。これらの化合物から、アミン部位にNHCH_2Bocを有するcis体を5種、その立体異性体であるtrans体を5種を選択し、合計10化合物について20種類のキナーゼに対する阻害活性の評価を行った。その結果、複素芳香環に6-クロロギノリン部位を有する化合物において、立体異性体間(cis-体-trans-体間)で阻害活性に相違が観測された。すなわち、キナーゼJAK3において、cis-体はtrans-体よりも3倍近く強い活性を示した。一方で、キナーゼKDRついては、逆に、trans-体がcis-体よりも4倍近く高い阻害活性を示した。この結果は、本研究で構築した化合物ライブラリーが、シクロプロパン周りに三次元的に官能基を配置させたことにより、活性を示す官能基等の配置に関する情報を与えていることを示している。このような官能基の立体配置と活性との相互作用の相関を与えてくれる化合物ライブラリーは、創薬研究上、非常に有効である。
(抄録なし)
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