研究課題/領域番号 |
11J03322
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
駒野谷 将 北海道大学, 大学院・総合化学院, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 固体触媒 / 担持金属触媒 / キャラクタリゼーション / セルロース / グルコース / バイオマス転換 |
研究概要 |
セルロースは地球上で最も多く現存する再生可能なバイオマス資源であり、その有効利用法の確立が切望されている。当研究者はこれまでに、炭素担持Ru触媒を用いることによりセルロースからグルコースを高効率で合成できることを報告している。この際、担持Ruが加水分解を促進するという報告はこれまでにほとんど無く、興味深い結果であると言える。従って、このRu活性種の同定および生成機構を解明できれば、より高活性な触媒を設計する上での重要な指針になる。今年度の研究では、種々のキャラクタリゼーション法を用いて上記を明らかにすることを目的とした。 担持Ru種の生成機構は、触媒調製時の各段階におけるRu種を同定することにより明らかにすることとした。本触媒は担体への塩化Ru含浸担持後に(1)水素還元、(2)希釈酸素によるパッシベーション、(3)空気暴露を行うことにより調製される。(1)の段階ではH_2-TPRの結果から、塩化RuがRu金属へと完全に還元されていることが分かった。(2)では酸素パルス滴定法から、Ru金属が1分子の酸素と反応し酸化Ruへ酸化されると示唆された。TEMの結果から本Ru種は約1mmの微粒子であると考えられ、この微粒子であることが酸化Ruへの酸化を容易にさせたと推測する。(3)においてはXAFSおよびTPDから、酸化Ruに水2分子が吸着することにより酸化Ru水和物(RuO_2-2H_2O)の生成を確認した。 次に、上記Ru種の反応中における化学種を明らかにするために、セロビオース加水分解反応をQuickXAFSで観察した。その結果、RuO_2-2H_2Oは反応中にセロビオースおよびグルコースの還元性末端によりRuOx種(x=0.4)へと還元されることが分かった。しかし、本Ru種は依然として酸化状態を維持しており、この酸化されたRuが酸触媒として加水分解反応を促進したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標としていた反応中におけるRu種の同定を達成したことから、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、Ruの酸性質を明らかにする。これには一般的に赤外分光分析が用いられるが、炭素担体が赤外光を吸収することから良質なスペクトルを得ることが困難である。そこで、モデル触媒としてシリカ担持Ru触媒を調製し、本キャラクタリゼーションに用いる。更に、本触媒を用いて典型的な酸触媒反応を実施し、従来の酸触媒との比較検討を図る。 次に、Ru触媒の他の反応への応用を検討する。その一つとしてセルロースの低圧水素化が挙げられる。当研究室では既に、本Ru触媒によりセルロース水素化分解反応に必要な水素圧を5MPaから1MPa未満に減少できることを報告している。そこで、水素化分解反応中におけるRu種をXAFSにより解明すると共に、それにより得られた知見を元に新規高活性触媒を開発することにより糖アルコール収率の更なる向上を目指す。
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