研究課題/領域番号 |
11J03343
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 大志 大阪大学, 微生物病研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 日本脳炎ウイルス / コアタンパク質 / RNA複製 |
研究概要 |
日本脳炎ウイルス(JEV)はフラビウイルス科に分類され、ヒトやウマに致死的な神経症状を引き起こす。JEVのコアタンパク質はウイルス粒子を構成する構造タンパク質であるだけでなく、ウイルスの複製や病原性にも関与する多機能タンパク質であることがこれまでに報告されている。本研究ではウイルス複製に関わるコアタンパク質の機能を明らかにすることで、JEVの病原発現機構の解明を試みた。 JEVコアタンパク質と相互作用する宿主因子の一つとして、核タンパク質の一つであるHeterogenous nuclear ribonucleoprotein A2 (hnRNPA2)をpull-down assayおよび質量分析法により同定した。hnRNP A2とコアタンパク質の相互作用は免疫沈降法によっても確認された。JEVが感染した細胞では、主に核に局在していたhnRNP A2の細胞質への移行が観察され、この細胞質移行にコアタンパク質が関与することが示された。siRNAによってhnRNP A2の発現を抑制すると感染細胞内のJEVのRNA量が~90%低下した。このRNA量の低下はRNA複製が抑制されることによって引き起こされており、hnRNP A2はJEV RNA複製に重要な因子であることが明らかになった。 JEVを含むフラビウイルスのRNA複製は、小胞体に由来する膜様構造の複製複合体で行われる。hnRN PA2はJEVのコアタンパク質だけでなくRNA依存性RNA合成酵素であるNS5、およびJEVのマイナス鎖RNAと感染細胞の小胞体で相互作用することが示された。以上の成績から、hnRN PA2はコアタンパク質によって複製複合体へとリクルートされ、NS5およびウイルスRNAと相互作用して、ウイルスRNAの複製を亢進していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までにJEVのコアタンパク質と相互作用する宿主因子のスクリーニング等はおおむね完了している。またその中からウイルス複製に関与すると考えられるhnRNP A2を同定し、そのメカニズムについても明らかにすることができた。これらの成果はJEVのコアタンパク質の宿主細胞内での機能を理解し、病態発現の解明につながると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
JEVコアタンパク質は多機能タンパク質であり、その細胞内動態を含め、機能についても不明な点は多く残されている。特に病態発現に関与すると考えられるコアタンパク質の核内での機能については平成23度では検討することができなかった。すでに候補因子のスクリーニングおよび同定は進めており、今後はこの核内における機能に焦点を当て研究を推進していく予定である。
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