研究課題/領域番号 |
11J03412
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
安田 尚人 北海道大学, 大学院・工学院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 燃焼合成 / 水素貯蔵 / 水素吸蔵合金 / エクセルギー / 気固反応 |
研究概要 |
本研究で提案する水素雰囲気中における水素吸蔵合金の燃焼合成は、従来法と比較して合金製造時および活性化処理時両者において必要とされる投入エネルギーの大幅な低減が期待できる。一方、燃焼合成時の雰囲気や圧力が反応機構および合金の活性化挙動やプラトー特性に及ぼす影響については体系的には調査されておらず、本製造技術の確立のためにはそれらの検討が必須である。また、燃焼合成法の有用性を定量的に示すためには合金製造時の投入エネルギー量の評価やエネルギーが有効に使われていない部分を明らかにするエクセルギー解析を行い、従来法と比較する必要がある。平成23年度は以下について研究を行った。 ・燃焼合成時の水素圧力が反応機構及びLaNi5合金の水素化特性に及ぼす影響 希土類金属酸化物を原料とし、還元剤としてCaを混合し水素中で加熱することで、Caの水素化時の生成熱を利用し、LaNi5合金の燃焼合成に成功した。希土類系合金の燃焼合成反応は還元剤の水素化を契機とすること、合成時の水素圧力が高いほど着火温度が減少することを確認した。また1.0MPaの水素雰囲気中で合成した合金は冷却時に水素を吸蔵し、体積膨張により粉砕工程不要で均一な粉末製品が得られた。またこの試料は従来より低圧で初期活性可能であった。 ・燃焼合成による希土類基水素吸蔵合金製造のエネルギー/エクセルギー解析 上記で提案した水素吸蔵合金製造プロセスの環境負荷を明らかにするため、投入エネルギー量及びエクセルギー損失量の観点から従来プロセスである溶解法と比較、評価した。結果として、燃焼合成法の適用により投入する1次エネルギーを11%、エクセルギー損失を14.6(10%)MJ/kg-LaNi5低減できた。提案法はCaの水素化熱の利用により必要とされる加熱温度が低く、高活性な合金が得られることが低減に大きく寄与することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績概要に記載した研究成果に基づき、2報の学術投稿論文を執筆し、1報が掲載済み、1報が掲載決定となっている。また国内外で4件の学会発表を行い、そのうちの1件では次年度以降に取り組み予定であった水素吸蔵合金のケミカルヒートポンプへの適用について発表している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は当初の研究計画の通り、イルメナイトの還元によるTiFe基合金の燃焼合成を中心に取り組む予定である。Tiの重要な鉱石原料としてイルメナイト(TiFeO3)が挙げられるが、現状のTiFeの製造はまずイルメナイトからFeを分離後、複数の工程を経てKroll法により純Tiを得、高炉製銑法により得られたFeと再び反応させることでTiFeを得るという極めて非効率的なプロセスであるといえる。従って、イルメナイトより直接TiFe基合金の合成が可能となれば合金コストの大幅な削減、ひいては水素吸蔵合金を利用したヒートポンプシステムや水素貯蔵技術の普及に大きく貢献できる。
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