研究課題/領域番号 |
11J03453
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 聡一 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ミリ波 / 100GHz / 透過特性 / 誘電特性 / 密度 / 異方性 / 誘電体指数混合則 / 非破壊評価 |
研究概要 |
木材の新しい非破壊評価の手段の開発の一環である「100GHzミリ波に対する木材の透過特性」に関して掲げた4つの目的、木材の異方性の影響、木材の密度の影響、年輪構造の影響、含水率の影響のうち、最初の2つを明らかにした。以下、計画書に基づいてその詳細を報告する。 木材を透過したミリ波の位相と振幅を同時に測定する実験装置を作成した。Gunnダイオードで発振したミリ波はカプラーで測定用と参照用信号に分け、測定用信号はコニカルホーンから空気中に放射し、試料を透過した成分を開口面が1.27mm×2.54mmの大きさのプローブで受信し、IQミキサへ送り、そこで参照信号およびその直交成分と乗算した信号を電圧V_IおよびV_Qとして測定し、換算式を用いて振幅Aと位相ξを計算した。 木材試料として、含水率0%の針葉樹(ヒノキ、スギ、アカマツ)、広葉樹の環孔材(キリ、クリ、ケヤキ)および広葉樹の散孔材(トチノキ、ブナ、イスノキ)の板目板およびまさ目板を準備した。 木材の異方性の影響について明らかにするために、ミリ波の偏光方向が木材の繊維方向(L)および接線方向(T)と平行な場合について、試料を透過したミリ波の減衰および位相を測定し、その厚さの情報と合わせて、誘電率を計算し、樹種による木材の密度の違いを利用して、誘電率の木材の密度に対する依存性を求めた。 方向LとTに関する木材の誘電率は、いずれも密度の増加に伴い非線形に増加した。この傾向は木材を木材実質と空気の混合体ととらえ、LichteneckerとRother(1931)によって提案された誘電体の指数混合則を用いると説明できた。その結果、木材のすべてが木材実質で構成されるとき、LとTの方向の誘電率が等しく、異方性は生じないことがわかった。したがって、木材め異方性は空気の配列によって生じることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の通り、木材の100GHzにおける誘電特性のうち、含水率および年輪構造の依存性について未検討である。これは測定装置そのものの特性評価に時間を割いたためである。とくにコニカルホーンアンテナと受信アンテナの間で起こる多重反射は誘電率の測定誤差に大きく影響するため慎重に行った。
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今後の研究の推進方策 |
上述の未検討の課題、木材の100GHzにおける誘電特性の含水率および年輪構造の依存性について検討する。さらに、上述した、実験誤差に及ぼす多重反射の影響は、木材の非破壊評価への本研究の応用の大きな障壁となることから、さらに詳しく検討する必要があると考えられる。今後は、多重反射を引き起こす要因を考慮したミリ波の伝搬モデルを作り、同周波数における誘電率がはっきりしている物質を透過したミリ波の振幅や位相を測定してそのモデルの計算結果と比較することで、多重反射の影響を明確にし、誘電率の測定値にフィードバックすることを予定している。
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