研究概要 |
これまでに統合失調症の環境要因の一つである周産期ウィルス感染のモデル動物としてtoll-like receptor3アゴニストpolyI:Cを新生仔期マウスに処置することで新生仔期擬似ウィルス感染モデル動物の作製を行なった(Ibi et al.,2009 Neurosci Res)。 本年度は、新生仔期polyI:C処置マウスで認められる脳機能障害にはアストログリア細胞のインターフェロン誘導性膜貫通タンパク(IFITM3)が関与することを一流英文学術誌Glia誌に報告した(Ibi et al.,Glia,Inpress)。Glia誌に受理された研究内容の概要を記載する。In vitro研究からアストログリア細胞のIFITM3は早期エンドソームに局在し、アストログリア細胞のエンドサイトーシスを制御することで細胞外液性因子の異常を引き起こし、それにより培養神経細胞の突起伸展およびスパイン形成が抑制されることを明らかとした(Ibi et al.,Glia,In press)。In vivoの研究からはpolyI:C処置による認知障害および大脳皮質におけるスパイン低下はifitm3ノックアウトマウスにおいて観察されなかったことから、それら脳機能異常においてもIFITM3が重要な役割を担っていることを明らかとした(Ibi et al.,GIia,Inpress)。本研究は統合失調症の環境要因の分子メカニズム解明および分子標的治療薬開発に繋がると考えられる。 今年度は、IFITM3によるエンドサイトーシス制御の分子メカニズムの解明とそれによって影響を受ける細胞外液性因子の網羅的解析を開始した。IFITM3によるエンドサイトーシス制御の分子メカニズム解明のためにGST融合IFITM3を作製し、GSTプルダウンアッセイを行い、IFITM3の結合タンパクを現在解析中である。また細胞外液性因子の網羅的解析のためにセクレトーム解析を行った。その結果、今のところ複数の候補分子が同定され、個々の分泌性タンパクが神経細胞に与える影響に関して現在調査中である。さらに2012年の11月より分子薬理学の最新技術習得のために米国ニューヨークのMount Sinal HospitalのJavier Gonzalez-Maeso先生の研究室において研究指導を受けている。現在習得中の技術は今後のIFITM3の詳細な分子機能解析に有用となるであろう。
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