研究課題
根粒数が増加し、窒素固定能力が上昇しているミヤコグサenf1変異体の原因遺伝子の探索を行った。親品種であるMG20と戻し交配をしたF2世代のうち、MG20の表現型を示す個体を選抜し、次世代ゲノムシーケンサーで全ゲノム配列を決定して、enf1変異体の塩基配列と比較することで変異個所を明らかにした。その結果、ラフマッピングで絞り込まれていたゲノム領域について、8個の遺伝子のエキソン内に塩基置換が存在しており、ダイレクトシーケンスを行ったところ、2つの遺伝子内の変異が実際にenf1変異体に存在していることが確認された。そのうちの1つの遺伝子内の塩基置換がアミノ酸極性の変わる変異であるため、原因遺伝子候補の可能性があり、現在相補実験を進めている。また、マイクロアレイの結果から、enf1変異体で発現がなくなっているNo38遺伝子が明らかになっているが、この遺伝子を過剰発現させた毛状根では根粒数が減少し、RNAiによって遺伝子発現をノックダウンした毛状根では根粒数が増加することが分かった。ダイズmutant libraryのTILLING解析によって、No38番遺伝子の変異体を探索したが、イントロン内の変異しか見つからなかった。また、ENF1遺伝子のように窒素固定活性に影響を与えるゲノム領域を明らかにするため、MG20とB129の交配F8世代からなるRILを用いて、窒素固定活性に関するQTL解析を行った。その結果、第4染色体のTMO832マーカー近傍に、窒素固定活性・根粒重・茎長のQTLがマップされた。このゲノム領域には、以前の研究で種子重のQTLがマップされており、さらに窒素固定活性制御遺伝子のSen1が存在していた。そこでSen1遺伝子の配列をMG20とB129で比較したところ、B129では3塩基の欠失があり、Asnが欠失していることが明らかになった。これらの結果から、Sen1遺伝子の配列の違いが上述のQTLに影響を与えている可能性があり、マメ科植物の重要な分子育種マーカーに成り得るため、両品種の3塩基の違いが窒素固定活性に与える影響について検証を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、初年度の間にenf1変異体の原因遺伝子の探索と機能解析を行い、原因遺伝子候補の絞り込みや、enf1変異体で中心的な役割を果たすと考えられるNo38遺伝子の機能解析を行うことが出来た。しかしながら、ダイズのNo38変異体の探索の結果、イントロン内の変異しか見つからなかった。また、当初の計画にはいれていなかった、窒素固定に関するQTL解析を行い、Sen1遺伝子を含む重要なゲノム領域を明らかにすることが出来た。
今後は、当初の計画通りenf1原因遺伝子の相補実験を行うとともに、No38遺伝子の発現が大きく減少しているLORE1変異体の解析を進める。また、ダイズENF1候補遺伝子のTILLING解析を佐賀大学において現在進行中であるため、変異体が得られ次第、特徴解析を行う。ダイズNo38遺伝子の変異体については、英国ジョンイネスセンターに依頼し、TILLING解析を行ってもらう必要がある。また、MG20とB129における、Sen1遺伝子の塩基配列の違いが窒素固定活性に与える影響について、ミヤコグサsen1変異体に両品種由来のSent遺伝子を導入し、窒素固定活性を比較する予定である。
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Journal of Plant Research
巻: 125 ページ: 395-406
10.1007/s10265-011-0459-1
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
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10.1073/pnas.1105892108
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