研究課題/領域番号 |
11J03531
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通施設) |
研究代表者 |
常松 友美 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 特別研究員(PD)
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キーワード | オレキシン / オプトジェネティクス / ハロロドプシン / アーキロドプシン3 / 徐波睡眠 |
研究概要 |
睡眠覚醒は個体でのみ生じる生理現象のため、睡眠覚醒の本質を理解するためには個体レベルでの研究が必要不可欠である。そこで本研究では、近年急速に発展してきているオプトジェネティクスを適用することで、睡眠覚醒調節において非常に重要な役割を担うオレキシン産生神経(オレキシン神経)活動を光によって制御し、個体におけるオレキシン神経の生理的意義を詳細に解析することを目的としている。 平成23年度は、新たにオレキシン神経特異的に新規の光誘導性プロトンポンプであるアーキロドプシン3(Arch)を発現する遺伝子改変マウスの作製に成功した。免疫組織化学的手法を用いた解析により、作製した遺伝子改変マウスでは、およそ80%のオレキシン免疫陽性細胞においてArchが発現していることを確認した。スライスパッチクランプ法によるin vitroの解析より、緑色光を照射することで強い過分極応答を示し、また10分以上に渡り完全に自発発火を抑制出来ることを確認した。従来用いられてきた光誘導性クロライドポンプであるハロロドプシンは、脱感作しやすい性質を持つため、1分程度しか抑制できず、長時間の抑制には不向きであったが、Archを適用することで長時間の抑制が可能となった。この遺伝子改変マウスから脳波および筋電図を記録することで、睡眠覚醒ステージを判定しながら、両側視床下部に刺入した光ファイバーを介し、緑色光を1時間照射したところ、暗期(活動期)前半において、オレキシン神経活動を抑制すると、有意に覚醒時間が減少し、徐波睡眠の時間が増加することを見出した。 本研究により、オレキシン神経活動が覚醒状態の維持において大変重要な役割を果たすことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
交付申請書に記載した平成23年度の研究計画では、新規遺伝子改変マウスの作製およびin vitroのスライスパッチクランプ法を用いた光刺激条件の検討までであったが、実際には本年度はさらに自由行動下の個体マウスを用いたin vivo実験まで行った。このことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は現時点で順調に進展していると考えている。そのため、今後の方策としては早い時期での論文投稿を目指す。
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