研究課題
睡眠覚醒は個体でのみ生じる生理現象のため、睡眠覚醒の本質を理解するためには個体レベルでの研究が必要不可欠である。そこで本研究では、オプトジェネティクスを適用することで、睡眠覚醒調節において非常に重要な役割を担うオレキシン産生神経(オレキシン神経)、およびメラニン凝集ホルモン産生神経(MCH神経)活動を光によって制御し、個体におけるオレキシン神経、およびMCH神経の生理的意義を詳細に解析することを目的としている。平成25年度は、オレキシン神経活動を抑制するために、オレキシン神経特異的に緑色光活性化プロトンポンプであるアーキロドプシンTP009系統(ArchT)を発現する遺伝子改変マウスの作製に成功した。この遺伝子改変マウスに対し、光ファイバーを介し、緑色光を1時間照射し続けたところ、活動期である暗期において、覚醒時間が有意に減少することが明らかとなった。このことは、オレキシン神経活動が覚醒状態の維持において、大変重要な役割を果たすことを示唆している。本研究で得られた結果は、Behavioural Brain Research誌に単独筆頭著者として発表した。また、MCH神経活動を活性化、あるいは抑制するために、MCH神経特異的に青色光活性化タンパク質であるチャネルロドプシン2(ChR2)、あるいはArchTを発現する遺伝子改変マウスの作成にも成功している。これらの遺伝子改変マウスを用いて、MCH神経活動を活性化するとレム睡眠時間が有意に増加した。一方、MCH神経を抑制しても睡眠覚醒サイクルに影響は見られなかった。このことから、MCH神経の活動はレム睡眠調節において、レム睡眠を誘導するために十分条件ではあるが、必要条件ではないことが明らかとなった。本研究で得られた結果は、The Journal of Neuroscience誌に単独筆頭著者として投稿し、二度目のリバイス中である。
1: 当初の計画以上に進展している
交付申請書に記載した平成25年度の研究計画では、新規作成した遺伝子改変マウスを用いたin vivoでのオレキシン神経活動制御を行う予定としていた。本研究に関しては、Behavioural Brain Research誌に発表している。さらに、メラニン凝集ホルモン神経活動の制御にも成功し、The Journal of Neuroscience誌に投稿中である。以上のことから、当初の計画以上に進展したと言える。
本研究は順調に進展したと考えている。
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