研究課題
Toll-like recepto r3により認識されるRNAの構造の同定を目指して研究を進めている。まず、ホリオウイルスのゲノムをもとにin vitroでRNAを合成し、TLR3の活性化について検討した。ゲノム全長を10セグメントに分け、sense鎖ssRNA、antisense鎖ssRNAおよびdsRNAを作製した。これらのRNAによりTLR3を強制発現させたHEK293細胞を細胞外から刺激し、IFN-betaプロモーターの活性化を調べたところ、すべての二本鎖RNAと一部の一本鎖1姻Aで活性が見られた。一本鎖RNAの活性はRNAの培養液中での安定性と相関していた。レポーターアッセイにおいてTLR3の活性化がみられたssRNAによりマウス脾臓由来樹状細胞を刺激し、TLR3の活性化を調べた。その結果TLR3依存的なI型IFNおよび炎症性サイトカインの産生が見られた。また、RNaseIIIにより活性が消失したことから、RNA二重鎖部分を含む構造が応答に重要であることが示唆された。最も活性が高かったssRNAについてHeLa細胞内への取り込みを共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察したところ、エンドソームに取り込まれてTLR3と共局在する様子が観察された。また、TLR3を高発現するマウス脾臓由来CD8+樹状細胞においても同様に取り込まれる様子が観察された。以上の結果より、これまでTLR3のリガンドは二重鎖RNAであると考えられてきたが、ある種の二次構造を有する一本鎖RNAによってもTLR3が活性化されることが示された。TLR3リガンドの取り込みから認識に至る機構は不明な点が多く、ウイルス感染や細胞のネクローシスに対するTLR3の役割について詳細は分かっていないというのが現状であり、本研究でTLR3の新たなリガンドモデルを提示した意義は大きいと考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
年次計画通り、poliovirusゲノムより調製したRNAによるTLR3の活性化について評価した。その結果、当初の想定以上の進展が見られ、TLR3リガンドとして、ある種の新たな構造を示すことができた。
TLR3活性化構造の同定について、計画より早期に新たな知見が得られた。示したTLR3リガンドについて、細胞内に取り込まれてエンドソームに局在するTLR3まで送達される経路および機構の解析がTLR3/TICAM-1経路のシグナル伝達機構についての解明を目指す本研究課題において非常に重要となっている。そこで、本年度に得られた結果をもとに、TLR3リガンドがTLR3に認識されるまでの部分に焦点をあてて計画を推進していくこととする。
すべて 2011
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Journal of Clinical investigation
巻: 121(12) ページ: 4889-4902
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PLoS One
巻: 6(12) ページ: e28500
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