研究課題/領域番号 |
11J03536
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
立松 恵 北海道大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | Toll-like receptor / ssRNA / interferon / cytokine / poliovirus |
研究概要 |
Toll-like receptor(TLR)3は、細胞外から取り込まれたウイルス由来二本鎖RNAをエンドソーム内で認識し、I型インターフェロン(IFN)や炎症性サイトカインを産生する。しかし、TLR3が感染病態へ関与するウイルスの中には、二本鎖RNAをほとんど作らないものも含まれており、実際にウイルス感染時にTLR3がどういった構造を認識するのかはわかっていない。そこで、TLR3を活性化するRNAの構造の同定を目指す。近年、ポリオウイルス感染への防御応答においてTLR3を介したIFN産生が重要であることが報告されたことから、ポリオウイルス感染時にTLR3が認識するRNAについて検討した。 ポリオウイルス感染細胞由来のRNAは、マウス脾臓細胞由来CD11c+樹状細胞において、TLR3依存的なIFN産生を引き起こした。また、抽出したRNAは、一本鎖RNA特異的なRNaseによる分解を受けたことから、二本鎖RNAよりもむしろ一本鎖RNAを多く含むことが明らかとなった。 ポリオウイルスゲノムを10箇所にわけてin vitro transcriptionにより一本鎖RNAを作製したところ、いくつかの一本鎖RNAによるTLR3依存的な応答が見られ、とくに5番目のセグメントであるPV5において最も強い活性化がみられた。そこで、PV5の二次構造について、ソフトウエア解析および酵素処理による分解フラグメントの解析を行って二次構造を予測した。 予測構造では、PV5はバルジやインターナルループを含む不完全な二本鎖が連なる領域を有しており、その領域がTLR3により認識されることが考えられる。この領域を除く部分を欠損させても、安定なRNAであれば活性が残った。 以上の結果より、TLR3は二本鎖RNAのみでなく一本鎖RNAの部分構造としての不完全な二本鎖領域を認識することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Toll-like receptor3によるリガンドの認識について、これまで報告のある二本鎖RNAの他、一本鎖RNAについてもリガンドとして機能しうることを示すことができた。また、ここまでの結果について論文にまとめ、現在、受理が確定している。
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今後の研究の推進方策 |
Toll-like receptor3を介した応答において必須の分子として、当研究室でRaftlinを同定した。Raftlinはリガンドの取り込み過程で重要な分子であり、TLR3のリガンドであるpoly(I:C)の他、TLR4のリガンドであるLPS刺激に対する応答にも関与する可能性があるが、どのような機能を持つのかは不明である。TLR3/4シグナルにおけるRaftlinの役割について解明を目指している。培養細胞に加え、マウスを利用した実験系も計画しており、現在、ノックアウトマウスの作製中である。
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