研究課題/領域番号 |
11J03568
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
別府 薫 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | アストロサイト / 虚血 / グルタミン酸 / チャネルロドプシン(ChR2) |
研究概要 |
健康な脳が病態脳へと変容する根本的な原因を解明することを目的とし、病態が生じる背景にグリア細胞の異常活動があるのではないかという仮説を立て、神経-グリア細胞間の情報伝達機序と、病態時におけるその破綻機序について調べた。本研究では特に、脳虚血におけるアストロサイトの活動に着目した。 1. 虚血時における過剰なグルタミン酸の放出細胞を同定 急性小脳スライス標本を潅流する溶液から酸素とグルコースを抜いて虚血模擬状態を作った。虚血模擬状態の開始から数分後、神経細胞から興奮性の電流が記録された。この電流はグルタミン酸受容体の阻害剤で抑制されたことから、グルタミン酸が放出されていることが分かった。神経細胞からの伝達物質を阻害した条件下であっても電流が記録されたことから、グリア細胞からグルタミン酸が放出されていることが示唆された。 2. アストロサイトからのグルタミン酸放出機構の同定 虚血時における過剰なグルタミン酸放出は、アストロサイトのアシドーシスが引き金となっている可能性に着目した。これを調べるために、H+の透過性が高い光感受性の膜たんぱく質であるChR2を、アストロサイト特異的に発現させたマウスを用いた。まず、ChR2の光刺激によりアストロサイトが酸性化することを確認した。またこの酸性化が引き金となってグルタミン酸が放出されることも分かった。 3. アストロサイトの酸性化拮抗による虚血時の神経細胞死抑制効果の検討 アストロサイトの酸性化を拮抗することにより、虚血時の過剰なグルタミン酸放出を止めることができるかを検証した。ここでは光に反応して細胞内からH+を汲み出すポンプArchTをアストロサイト特異的に発現させたマウスを用いた。ArchT光刺激により、神経細胞での虚血性グルタミン酸電流が回復することを確認した。また、In vivo虚血モデルにおいても、アストロサイトのArchT刺激によって脳傷害が抑制されることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画に沿って実験を遂行し、それらの研究結果をまとめて論文を発表することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
虚血以外の病態時にも、アストロサイトからの過剰な伝達物質の放出が原因となって神経細胞死が起きているのかを検証する。 また、生理的条件下でも、pHに依存したアストロサイトから神経細胞への情報伝達機構が存在するのかを調べる。
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