研究課題/領域番号 |
11J03584
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷口 順子 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 神経外胚葉 / 頂毛 / FoxQ2 / Hbn / TGF-β / AnkAT-1 |
研究概要 |
動物極神経外胚葉において、頂毛形成やセロトニン神経形成に関与する様々な遺伝子が背側または腹側に偏った発現パターンを示すことをこれまでにも報告してきたが、腹側に偏って発現するfoxQ2と背側に偏って発現するhbnのそれぞれがTGF-βの影響を受けていることを実験的に示した。限られた細胞数のウニ動物極神経外胚葉内においても外部領域からのシグナルの影響を受けて複雑な遺伝子発現のパターニングを持つことがわかってきており、今後頂毛形成細胞が神経細胞と遺伝子発現レベルでどのように関わり合っているのかさらなる解析を進めていく。 また自身が以前に発見した頂毛伸長因子AnkAT-1のタンパク質発現パターンを観察したところ、GFP結合ankAT-1 mRNA実験での予測通り繊毛の根元に強く存在していたが、細胞質にも弱い発現がみられた。 ankAT-a 1mRNAは動物極側のみに強く発現するが、タンパク質は動物極側に強く発現するもののその他の外胚葉の繊毛の根元にも存在しており、その発現は植物極に近づくほど弱くなることが観察された。 AnkAT-1と相互作用する因子の探索も進めているところであり、その成果は頂毛形成に関わる因子の新たな発見に繋がるとともに、繊毛の長さを調節する普遍的なメカニズムの解明にも繋がる可能性を持つ。頂毛や神経細胞形成に関与する因子の抑制実験等を通して、今後も発生過程におけるそれらの機能の全貌を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は出産育児による中断期間があり半年間の研究実績であるが、短い時間のなかでもよい結果を残すことができたと考えている。神経外胚葉の遺伝子発現やその抑制実験の解析から、神経外胚葉の領域決定やその分化に関するメカニズムが次々と明らかになってきており、本研究の目的である頂毛の機能解明に繋がる成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
動物極神経外胚葉において、頂毛を形成する細胞の時空間的パターニングを明らかにしていく。頂毛を形成する細胞と、それ以外の細胞が神経外胚葉のどの位置を占め、そしてそれぞれに発現する遺伝子群がお互いにどういった影響を及ぼし合うのかを今後も解析する。 頂毛伸長因子AnkAT-1がタンパク質レベルで頂毛以外の繊毛の根元にも発現していることがわかり、AnkAT-1抑制胚が遊泳繊毛にも影響を及ぼしている可能性があることから、頂毛が遊泳に与える影響をAnkAT-1抑制胚で解析することができるのかという疑問が生じてきている。しかし、AnkAT-1が頂毛を持つ細胞により強く発現することはタンパク質レベルでも明確であり、今後もAnkAT-1と相互作用する因子の探索を行いながら、頂毛に関与するその他の遺伝子の探索を進める。
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