研究課題/領域番号 |
11J03707
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
細谷 昭仁 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ロジウム / 環加付加反応 / ヒドロアシル化 / アレン / アルデヒド / 動的速度論的光学分割 / 中員環合成 |
研究概要 |
著者はロジウム錯体とアレンから形成されるローダサイクル中間体を利用した環化反応を利用した効率的な環状化合物の合成を目指して研究を行っており、これまでに側鎖にアルキンやアルケンなどの多重結合を有する4-アレナールとRh触媒との反応により分子内[6+2]環化付加反応が進行し、8員環を含む二環式ケトンが一挙に合成できることを報告している。一般に中員環である8員環の構築はエネルギー的に不利になることから比較的困難であることが知られており、効率的な8員環合成法の開発は有機合成化学上有用となりうる。そこで筆者は本[6+2]環化付加反応を分子間反応へと展開することで単環式8員環化合物が合成出来るのではないかと考え研究を行った。その結果、ロジウム触媒存在下、4-アレナールと末端アルキン間で分子間[6+2]環化付加反応が進行し、目的の単環式8員環ケトンが高収率かつ位置選択的に得られることを見出した。また本反応では光学活性な4-アレナールを用いると、アレン部位の軸不斉が生成物に転写され、8員環生成物が光学活性体として得られることから、天然物合成にも応用されることが期待される。また筆者は3ヶ月間の海外留学中に、オキサビシクロアルケンとシアン酸ナトリウムを、光学活性配位子を有するカチオン性ロジウム触媒存在下にて反応させると、環開裂反応が起こるとともに、系中で生じたシアン酸ナトリウムの求核攻撃が進行して、イソシアナート中間体が形成された後、生じたイソシアナートと水酸基が分子内環化することでオキサゾリジノン誘導体が高い不斉収率で生成することを見出した。本反応はロジウムによる触媒反応において、無機塩であるシアン酸塩を用いた初めての例である。生成体であるオキサゾリジノンは、Evansアルドール反応における不斉補助基として頻繁に用いられていることから、大変有用な反応である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
既に報告しているロジウム触媒による4-アレナールと多重結合との分子内[6+2]環化付加反応を、4-アレナールと末端アルキン間での分子間[6+2]環化反応へと展開させることに成功し、この成果は"Angewandte Chemie International Edition"誌に掲載された。さらに、上記の[6+2]環化付加反応の開発途上で4-アレナールとRh触媒との反応により、分子内ヒドロアシル化反応が進行して、6員環ケトンが収率良く得られることを新たに見出し、これをエナンチオ選択的な反応へと応用することにも成功した。また、カナダへの短期研究留学中に行っていた研究内容も最近"Organic Letters"誌に報告することができた。したがって期待以上の研究の進展があったと評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
筆者はこれまでの研究途上、4-アレナールとロジウム触媒との反応により分子内ヒドロアシル化反応が進行し、6員環ケトンが良好な収率で得られることを見出している。分子内ヒドロアシル化反応は原子効率が高く、環状化合物の効率的な合成法として盛んに研究がなされているが、6員環構築反応は報告例が非常に少なく3例のみに留まっている。そこで筆者は4-アレナールのヒドロアシル化反応を不斉反応への展開を視野に入れて検討を行った。その結果、光学活性配位子を有するロジウム触媒を用いることで目的の6員環ケトンを良好な収率かつ高い鏡像異性体過剰率で得ることに最近になって成功した。今後は、本反応のさらなる検討を行い、その後はこれまでに見出した反応を鍵反応とした生物活性物質の全合成を行う予定である。
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