研究課題/領域番号 |
11J03718
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
藤原 慶 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(PD)
|
キーワード | 再構成 / 無細胞翻訳 / 細胞抽出液 / タンパク質安定性 |
研究概要 |
生命を細胞抽出液から再構成するための手段を明らかにするために、細胞に近い細胞抽出液を調製することを試みた。通常使用される塩を含有する緩衝液の代わりに超純水を用いて細胞抽出液を調製した。超音波破砕によって60mg/mlの細胞抽出液を得られ、氷上では1日以上安定であった。この超純水調製細胞抽出液を用いてcell-free翻訳系にてGFPを合成させたところ、市販のcell-free翻訳系と同等の活性を持つことが示された。また、エバポレーターで水分を蒸発させて濃縮したところ、150mg/mlのタンパク質濃度にまで濃縮することができた。濃縮した細胞抽出液は希釈したのちにcell-free翻訳能を解析したところ、濃縮しない条件と同等のGFP合成量が観察された。そこで、細胞抽出液濃度とGFP合成量の関係を解析したところ、投入細胞抽出液量あたりのGFP合成活性は終濃度10mg/mlを境に減少することが明らかとなった。細胞内におけるタンパク質濃度は300mg/ml程度と見積もられているため、細胞抽出液ではなぜタンパク質濃度を上げるとGFP合成量が下がるのかを明らかにすることが今後の課題である。 また、上記の細胞抽出液を用いた37℃におけるGFP合成に必要な最少添加物を検討したところ、DNA、グルタミン酸カリウム、酢酸マグネシウムに加え、クレアチンリン酸とクレアチンキナーゼの組み合わせ、もしくはホスホエノールピルビン酸とHEPES緩衝液の組み合わせであることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始当初では非常に難しいことと考えていた、塩や緩衝液の添加がない超純水条件下においてcell-free翻訳系の調製に成功したためである。この超純水調製cell-free翻訳系を用いることで、細胞内メタボロームとタンパク質のみの濃縮を達成し、濃縮条件でもcell-free翻訳系の機能がダウンしないこと、閉鎖系における過剰濃度におけるcell-free翻訳系の効率が落ちることを見出すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
より細胞に近い細胞抽出液を得るには、10mg/ml以上の細胞抽出液濃度でも効率的に転写と翻訳ができる必要がある。そこで透析や膜タンパク質によって開放系にすることや、転写・翻訳に必要なタンパク質を外部から加えることで改善できるかを検討する。また、同様の現象が再構成型のcell-free翻訳系であるPURE systemにおいても見られるか確認する。この2つの差をもとに解析をすすめ、細胞レベルのタンパク質濃度で転写・翻訳を実現する。
|