研究課題
これまで緑葉の主要タンパク質Rubiscoに由来するδオピオイド受容体アゴニストペプチドのrubiscolin-6が、経口投与により中枢のプロスタグランジン(PG)D2を介して摂食促進作用を示すことを見出している。そこでPG類合成酵素のシクロオキシゲナーゼ(COX)類およびPGD2の合成酵素リポカリン(L)型および造血器(H)型PGD合成酵素(PGDS)のいずれを介しているのかを定量的RT-PCR法およびそれぞれのノックアウト(KO)マウスを用い検討した。rubiscolin-6投与により視床下部におけるCOX-2およびL-PGDSのmRNA発現量が増加した一方、COX-1およびH-PGDSのmRNA発現量に変化は認められなかった。したがって、rubiscolir-6の摂食促進作用にはCOX-2およびL-PGDSが関与していることが示唆された。次に、rubiscolin-6による摂食促進作用がPGDS類を介しているのかL-またはH-のそれぞれのKOマウスを用いて検討した。rubiscolir-6の経口投与による摂食促進作用は、野生型およびH-PGDS KOマウスでは認められたが、L-PGDS KOマウスでは認められなかった。したがって、rubiscolin-6による摂食促進作用は、L-PGDSを介していることがわかった。さらにδオピオイド受容体選択的アゴニストDPDPEが脳室内投与により、摂食促進作用を示すことを見出した。DPDPEによる摂食促進メカニズムを検討したところ、rubiscolin-6と同様に、δオピオイド受容体の下流でL-PGDSおよびPGD2系を介することを明らかにした。一般に脳内PGD2は、脳を包むくも膜や脳実質のオリゴデンドログリアに局在するL-PGDSにより産生されている。そこで現在、作用部位を特定するため、脳実質のL-PGDSのみを欠損させたコンディショナルL-PGDS KOマウスを作製し、作用機構を検討している。その他、外因性神経調節ペプチドの機能解析により、新しい神経調節経路を複数発見した。
2: おおむね順調に進展している
本研究により、δオピオイドアゴニストの経口または中枢投与による摂食促進作用を見出し、また、新しい食欲調節経路を解明した。研究は順調に進展している。
食欲調節メカニズムにおける作用部位を特定するため、薬理学的手法や遺伝子改変動物だけでなく、Cre/loxPシステムを用いたコンディショナル遺伝子欠損技術の導入や免疫組織化学的手法により、効率的に研究を進めている。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Am J Physiol Endocrinol Metab
巻: 302 ページ: 433-440
0.1152/ajpendo.00161.2011