研究課題/領域番号 |
11J03788
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
牧野 文信 大阪大学, 生命機能研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 温電子顕微鏡 / 単粒子像解析 / 連結部 / FlgK / FlgL |
研究概要 |
サルモネラなどの細菌は、数本のべん毛と呼ばれるらせん型プロペラを束にして回転することで、水中を自由に泳ぐことができる。べん毛は回転トルクを発生する基部体、ユニバーサルジョイントとして働くフック、プロペラに相当するべん毛繊維(繊維)に分けられる。フックと繊維の間は、フック繊維連結部(連結部)と呼ばれ、2種類のタンパク質で繋がれている。この連結部は、フックと繊維を強固に連結しつつ、ダイナミックな構造変化を互いに伝えず、繊維の構造変化を制御する機構を持っている。 本研究は、極低温電子顕微鏡像の画像解析法を用いて、連結部がもつこれらの機構を、立体構造に基づいて解明することが目的である。本年度は、L型およびR型直線繊維に結合したフック繊維連結部複合体(L型およびR型連結部複合体)の立体構造解析を行った。通常の画像解析法では、繊維およびフックがもつらせん構造による像パターンの影響が強いため三次元再構成に失敗した。そこで、連結部複合体に適した画像解析法を開発し、L型およびR型連結部複合体の三次元再構成に成功した。分解能はそれぞれ19Åと20Åである。これらの構造解析の結果、連結部を構成するFlgKとFlgLがそれぞれ11分子、細胞側からフック-FlgK-FlgL-繊維とらせん状に構築し、FlgKの外側のドメインがフックの外側のドメインと強く結合し、FlgKとFlgL、FlgLとFliCが素繊維方向に強く結合することがわかった。また、L型とR型連結部複合体の構造をフックに合わせて比較すると、連結部領域において素繊維方向の傾きが異なるということがわかった。この傾きの違いは、繊維がもつL型とR型の違いに酷似していることから、繊維同様にL型とR型でスイッチする構造であることが示唆された。このようにして連結部の機能を支える分子メカニズムの一端が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連結部複合体の立体構造解析を行うために、様々な工夫を重ね、連結部を解析するための画像解析法を自ら生み出し、三次元再構成が極めて困難とされていたL型およびR型連結部複合体の立体構造解析に初めて成功したため
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに詳細な連結部のメカニズム解明のために、連結部複合体の分子モデル構築を目指す。すでに本研究で得た三次元像にFliC分子、FlgL分子、FlgK分子、FlgE分子をそれぞれあてはめてみたが、FlgKとFlgEが接触してしまうことがわかっている。また、分解能が分子モデルを正確に構築するほど高くないため、密度マップを基にした分子モデル構築は難しい。そこで、FlgEは動かさず、分子動力学法を用いてFlgKの構造をぶつからないように構造変化させ当てはめる予定である。
|