本年度は以前開発してきた対話的・マルチスケールグラフナビゲーション技術がより幅広い生物学研究者にとって有用なものになるように、ネットワーク可視化・解析プラットフォームとしてデファクトスタンダードとなっているCytoscape上で本手法をプラグインとして実装した。また、スピードや各機能に関しても最適化を行った。さらに、機能ゲノム科学の様々なデータに対しての有用性を確認するため、昨年度に出芽酵母のタンパク質相互作用ネットワークデータを本手法によって解析した結果に加えて、植物のモデル生物として有名であるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の遺伝子の共発現データ(ATTED-II、http://atted.jp/)に対して、前述の開発したプラグインを応用した。その結果、大規模である約20万エッジのネットワークデータを直感的で階層的に表示できるのみでなく、ある機能の未知な遺伝子が制御応答に関係していることの発見に有効であった。本進捗はゲノミクス分野の中心的な査読付き国際学術誌であるBMC Genomics誌に掲載され、査読者からの評価も良好であった。また、様々なキーワードに関係する文献収集のネットワークデータを作成し、本手法の応用も行った。すると、本手法のProperty-Basedクラスタリングは相当遅くなることが分かった。今後の展望として、エッジが比較的少ないネットワークに対しても本手法のスピードが下がらないよう、さらに改善を行う予定である。
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