研究概要 |
半導体素子の微細化、低消費電力化および高性能化を目指して、半導体ナノワイヤと呼ばれる基板表面から垂直方向に成長する1次元ナノ構造の作製が行われており、ナノワイヤの形状、結晶構造およびバンド構造などの物性を理論的に解析することが求められている。我々の研究グループはウルツ鉱(WZ)構造と閃亜鉛鉱(ZB)構造の超格子構造(WZ-ZB超格子)をもつ小径のIII-V族化合物半導体ナノワイヤにおいて、サイズ効果により通常の[111]方向における超格子とは異なる、Type-Iのバンド配列をとり得ることをすでに明らかにしている。しかしながら、バンド配列の直径依存性およびWZ構造およびZB構造の層の厚さの依存はまだ明らかにされていないのが現状である。本研究では、タイトバインディング法によるWZ-ZB超格子ナノワイヤのバンド配列を評価することを目的とする。 タイトバインディングプログラムをWZ-ZB超格子ナノワイヤに適用し、直径が2.8-4.7nmのGaAs,InAsおよびInPにおけるWZ-ZB超格子ナノワイヤのバンド配列を求めた。直径約2.8nm、WZ構造およびZB構造の層の厚さがそれぞれ2および7bilayersのとき、バンド配列はType-Iの形になり、電子および正孔がZB層に閉じ込められることを見いだした。しかし直径が約4.7mと大きくなると同じ層の厚さでもType-IIのバンド配列になることがわかった。これは直径によるサイズ効果の影響が強いことを意味する。またWZ構造およびZB構造の層の厚さがそれぞれ8および3bilayersのとき、ZB層の厚さに関するサイズ効果が顕著にあらわれ、直径にかかわらず電子と正孔がWZ層に閉じ込められるType-Iのバンド配列をもつ結果が得られた。以上の結果はWZ-ZB超格子を利用した新しいバンドエンジニアリングへ重要な指針を提供する。
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