研究概要 |
本研究では,磁性ナノ微粒子を含む磁気機能性流体のメカニズムを解明することを目的として,新しい乱流抵抗低減法の確立を目指している.同時に,磁場環境下における磁気機能性流体の熱流動メカニズムについて調査を行っている. (1)層流域における磁性流体の流れのメカニズムの解明:層流域における磁性流体の管内圧力損失の計測を行った結果,磁場印加により管内圧力損失が増加することが分かった.この理由を検証するため,Lattice Boltzmann Method(LBM)により,二次元管内流動数値解析を行い,磁性微粒子の回転運動に起因する見かけ粘度の増加が管内圧力損失増加に寄与することが判明した. (2)乱流域における磁気粘弾性流体の流れのメカニズムの解明:粘弾性流体に磁性ナノ微粒子を添加し,外部磁場を印加することで磁気粘弾性流体の流動を能動的に制御した新しい乱流抵抗低減法の確立を目指している.平成23年度は,磁性ナノ微粒子を含む磁気粘弾性流体の動的レオロジー計測を行うため,磁場印加型レオメータを試作し,本流体の動的レオロジー計測を行った.その結果,磁場下において貯蔵弾性率が増加し,これは乱流抵抗低減に寄与する流体の弾性が増加したことを意味し,新しい乱流抵抗低減法の可能性を見出した. (3)磁気機能性流体の熱流動メカニズムの解明:外部磁場下では,磁気機能性流体に磁気体積力が作用し,流体が沸騰した場合,非磁性の気相には磁気浮力が作用し,管内は乱流状態となる.平成23年度の成果として,実験的アプローチにより外部磁場の印加により単相流および二相流において磁気機能性流体の熱輸送能力が飛躍的に向上することが分かった.また,この理由を検証するために,解析手法としてLBMを用いて磁性流体の単相熱輸送現象について二次元解析を行った結果,磁場印加により加熱部において循環流が形成されることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題に対して,磁性ナノ微粒子単体では乱流抵抗低減を示さないことが明らかになったが,磁性ナノ微粒子を粘弾性流体に添加することで,その貯蔵弾性率が外部磁場により変化することを明らかにした.これは新しい乱流抵抗低減法の可能性を示すことから,おおむね順調に研究は進展している.
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今後の研究の推進方策 |
層流域における磁性流体の流れのメカニズムを解明するため,Shliomisの理論を考慮した三次元管内流動解析をLBMを用いて解析を行う.また,磁場印加による磁気粘弾性流体のレオロジー特性の変化について理論的に考察するため,ネットワーク理論に基づく磁性ナノ微粒子の高分子繊維への影響について調査を行う.また,乱流域での磁気粘弾性流体の流れのメカニズムを解明するため,本流体が磁場制御円管内を循環する装置の試作を行う.同時に,三次元管内流動解析をLBMを用いて行う.磁気機能流体の熱流動メカニズムを解明するために,LBMによる管内気液二相流熱流動解析に取り組む.高計算コストおよび格子密度の増加に対応するためGraphics Processor Unitsを用いた大規模並列計算に取り組む.
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