研究課題/領域番号 |
11J03876
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
唐 振堯 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | スピンポンピング / グラフェン / スピン輸送 |
研究概要 |
本年度において、私はグラフェンにおける良好なスピンコヒーレンスと単一スピン操作の実現を目的として、スピンポンピングを用いた純スビン流を生成し、スビン輸送の直接観測に成功した。 私は単層グラフェン(SLG)でのスピン偏極と蓄積について検討した。 本研究において強磁性膜からのSLGへのスピン注入効率が最も重要なポイントである。 スピントロニクス研究、特に分子スピントロニクスにおいて、電気的スピン注入と非局所手法によるグラフェンの純スピン流の生成は最も注目されている。しかし、今まで実験で得られたSLGのスピン拡散長は大凡1-2μm前後であり、理論値より短いことが知られ、グラフェン中のスピン輸送の詳細についても未だ明らかにされていない。そのため、グラフェンにおけるスピン注入と輸送の新しい技術と概念の確立、新しい視点からグラフェンへのスピン輸送現象を検討することが求められている。そこで、私はSLGにおける純スピン流の注入及び生成の新しい方法、つまり電気的スピン注入と電気的局所方法を使用せずにSLGで純スピン流を生成させるスピンポンピング法について検討した。スピンポンピング誘起スピン注入法は、強磁性体/SLG界面の電気抵抗不整合によるスピン注入効率低下の問題を解決でき、電気的方法に比べ、より純粋なスピン流が生成でき、かつ、従来法と異なり、スピン輸送の直接観測が可能である。また、本研究で用いるサンプルの構造は他種類のサンプルに比べよりシンプルである。本年度において、スピンポンピング法により、SLGの室温スピン輸送の直接観測と、スピン拡散長の直接測定に初めて成功した。この成果により、グラフェンでのスピン輸送の物理学的な研究において、新しいプラットフォームを確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、単層グラフェンへのスピンポンピング誘起スピン注入の手法を確立した。また、この新しい実験方法を用いて、単層グラフェンでのスピン輸送を観測することができた。更に、本手法により作成したサンプルは従来法によるサンプルよりも簡単な構造にもかかわらず強磁性体/SLG界面の電気抵抗不整合によるスピン注入効率低下の問題を解決した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において下記の二つの課題が残されているため、今後それらについて追究する予定である。 (1)実験系の改善 本研究で得られたスピンコヒーレンス長は従来の手法で得られた結果に比べ短い。原因としてサンプルの処理手法によってレジスト残留が生じたことが考えられる。そのため、サンプルの処理方法を含む実験系の改善が必要。 (2)単層グラフェンでのスピン輸送の輸送機構の解明 現在単層グラフェンでのスピン輸送は多く観測されるが、その輸送機構については未だ明らかにされていない。そのため、今後の研究においては単層グラフェンでのスピン輸送機構について追究する。
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