研究課題/領域番号 |
11J03897
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
中島 忠章 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 新生仔期 / マウス / 子宮 / 膣 / 分化 / 細胞増殖 / 器官培養 / 成長因子 |
研究概要 |
1、子宮と膣は同じミュラー管から分化するが、その形態や機能は大きく異なる。膣上皮の分化にはFibroblast growth factor(FGF)シグナルが、細胞増殖にはhedgehog(HH)シグナルが関与していることがわかっていたが、HHシグナルがどのように膣上皮の細胞増殖を誘導するのかは不明であった。 そこで、世界で初めて生体内に近い環境で子宮と膣を器官培養できる方法を確立し、新生仔期の子宮と膣におけるHHシグナルの役割を解析した。その結果、HHシグナルは子宮と膣の間質を介して、子宮と膣の上皮の細胞増殖を促進することがわかった。 現在、横浜市立大学医学部産婦人科との共同研究で、子宮と膣がない患者に対する膣形成手術にFGFを用いることで、膣形成を早める臨床応用を研究中である。 2、子宮の分化に働く候補因子の中から、レチノイン酸シグナルに着目した。新生仔期の子宮と膣にレチノイン酸を添加すると、膣上皮が子宮様の単層上皮へと再分化した。 さらに、レチノイン酸合成酵素の遺伝子が、共に新生仔期の子宮間質で強く発現していた。 以上の結果より間質からのレチノイン酸シグナルが、新生仔期の子宮と膣上皮における分化トリガー因子であると考えた。 3、雌性生殖腺附属器官の細胞にウイルスを使わず遺伝子導入することは難しい。新規リポフェクション試薬を用いることで、子宮と膣の間質細胞に約50%の割合で遺伝子導入できることを発見した。この方法を応用することで、生体内の子宮と膣において、分化に関わる遺伝子発現を減少させるベクターを導入できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
FGFとHHの子宮と膣における働きを解明し、横浜市大医学部産婦人科では、子宮と膣がない患者に対する膣形成手術において、FGFの処置が既に始まっているため。 子宮と膣の遺伝子導入方法を確立する前に、新生仔期の子宮と膣上皮における分化トリガー因子の候補として、レチノイン酸シグナルに着目できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、レチノイン酸シグナルに焦点を絞り実験を行う。 新生仔期の子宮と膣上皮の分化時に、レチノイン酸がどのように合成され、シグナル伝達し、代謝されるのかを調べる。また、レチノイン酸シグナルの子宮と膣上皮の分化における役割を詳しく解析する。 そのために、生体内の子宮と膣において、レチノイン酸シグナル関連遺伝子の発現を減少させるベクターを導入できる方法を確立する。
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