研究概要 |
膣形成不全患者に対して、膣口付近の上皮を伸長させる膣形成手術が行われているが、時間がかかり、その上皮が膣に近いのかもわかっていない,,横浜市立大学医学部産婦人科との共同研究により、再建された膣上皮の構造タンパク質とエストロゲン受容体の発現は、膣上皮に近かった,,このことから、再建された膣上皮は、膣に近いことが示された、,30日齢のマウスの膣を器官培養し、FGF2とE2を単独または共添加したところ、FGF2とE2の共添加時にのみ、膣上皮の細胞増殖が促進された。このことは、再建膣といった通常の膣よりも条件の悪い環境下においても、FGF2とE2の両方が存在することで、膣上皮の細胞増殖が促進される可能性があることを示唆している。 子宮上皮の分化に働く新たな候補因子として、レチノイン酸(RA)を発見した,RAシグナルのmRNAとタンパク質発現を、胎生14.5日齢から成体におけるまで調べたところ、合成酵素の発現が子宮で常に高かった。RAが活性化している時期と場所を調べたところ、胎仔期のミュラー管の基部と中部の間質で活性化しており、尾部では活性化していないことがわかった。ミュラー管の基部,中部,尾部は、それぞれ卵管,子宮,膣になる領域である。器官培養したミュラー管尾部にRAを添加したところ、将来膣に分化する予定の上皮細胞が、子宮上皮細胞へと分化し、ミュラー管中部にRA受容体の阻害剤を添加すると、将来子宮に分化する予定の上皮細胞が、膣上皮細胞へと分化した。RAまたはRA受容体の阻害剤を添加して、宿主マウスの腎被膜下に1ヶ月間移植したところ、器官培養時に変化した上皮細胞の運命が、不可逆的であることがわかった。以上の結果より、子宮上皮の分化は胎仔期のRAシグナルによって誘導され、膣上皮の分化はRAシグナルがなくなることで誘導されることが考えられる。
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