近年、持続可能なエネルギー社会に向けて人工光合成に関する研究が急速に高まっている。一方、光合成を行う葉緑体は、高度に階層的な電子伝達組織を持つことで高次なエネルギー変換を達成している。ゆえに、人工光合成の実現には、生体の階層構造を考慮すべきである。本研究では、外界とエネルギー・物質の授受に開放的なゲルを用いることで、内部に高次な階層構造を組込み、可視光照射により内部の水から高エネルギー物質を生成する人工光合成ゲル、すなわち、「人工葉緑体」の創製を目指す。高分子網目を介在させて階層構造を導入することで、機能創発による人工光合成の実現が期待される。 本年度は、高分子を用いた階層構造化により、下記2つの方法から、システムの階層化に重要な因子を探索した。 1)合成高分子:各種機能分子を高分子中に導入し、それらの連携について評価した。 2)生体高分子:各種機能分子を高分子中に導入し、それらの配列・連携について評価した。 1)については、学会発表四件および、雑誌論文発表二件を行った。 2)については、合成高分子とは異なる新たな物性を見いだしており、その新しい進展が期待される。 上記2つの方法をとることにより、本来の光合成メカニズムの理解を深化させると同時に、人工光合成の実現の手がかりが得られると考えられる。また、エネルギー問題への対応が急速に叫ばれる中、本研究を推進させていくことは非常に重要な取り組みと考えられる。
|