研究課題/領域番号 |
11J03948
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
栂 達也 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ヌクレオチド除去修復 / 色素性乾皮症 / 紫外線DNA損傷 |
研究概要 |
本研究はヒトのヌクレオチド除去修復機構(NER)を、蛍光を利用し検出する分子センサーの創製を目的としている。NERは紫外線により生じる「紫外線DNA損傷」などを修復する役割を担っている。このNERが欠損した遺伝性疾患として色素性乾皮症(XP)が知られており、日光を浴びると高頻度に皮膚がんを発症するといった病態を呈する。従ってXP患者を早期に発見し、紫外線への曝露を防ぐことは大変重要である。本分子センサーは、XP診断への応用が可能であると考えられ、XP患者早期発見への貢献が期待される。 センサーは紫外線損傷を中央に含む2本鎖DNAに蛍光分子と消光分子を取り付けたもので、NERが起こると蛍光分子を含む鎖が解離して蛍光が発せられる。H24年度は、鎖内に蛍光標識を含むタイプと、末端に蛍光標識を含むタイプの2種類について条件を検討した。前者については、鎖内蛍光標識がNERの基質となる可能性が示唆されていたが、鎖内蛍光標識のみを含むDNAを細胞抽出液と抗体により評価した結果、実際には非特異的な分解であることが明らかになった。この結果から、従来のデザインを大きく変更する必要はないことが示唆された。またホスホロチオエートの導入数を増加させることにより、センサーの安定性を向上させることに成功した。後者については、損傷の3'側の鎖長を変化させたDNAを作製し細胞抽出液と反応させることにより、NERに必要な損傷の3'側塩基対数を29塩基対と決定した。この結果から、3'末端に蛍光標識を有するNERセンサーの開発が現実味を帯びた。 前年度に問題となっていた細胞抽出液の問題については、従来用いていたHeLaあるいはHEK293といったヒト由来細胞から、CHO細胞に変更を行った。CHO細胞の抽出液からは、強いNER活性を検出することができた。この抽出液を用いることで、研究の大幅な進展が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H24年度の目標として「ヒト細胞中でNERを検出することができるNERセンサーの開発」を掲げたが、未だこの目標は達成されていない。しかし鎖内蛍光標識の分解の同定やセンサーの安定性向上といった一定の成果は得られたため、このような自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度の研究の進行を妨げた大きな原因は、先に述べた細胞抽出液の活性の問題である。これはCHO細胞を用いることにより解決したが、年度後半であったため、まだこれを用いての網羅的な解析は行われていない。NER検出効率を向上させるための仕組みを導入したNERセンサーの候補を多数調製しており、CHO細胞抽出液を用いてこれらの評価を行うことにより、センサーの開発を進める予定である。また特に、NERが起こるために損傷の3'側に必要な塩基対数を決定できたのは大きな成果であり、この結果をもとに重点的に3'末端に蛍光標識を有するNERセンサーの開発を推進していく。
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