研究課題/領域番号 |
11J03950
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高見 英史 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 二酸化バナジウム / 金属-絶縁体転移 / ナノ構造 / ドメイン / 強相関電子系 / 室温巨大スイッチング |
研究概要 |
私は、多彩な物性および外場に対する巨大応答を示す3d遷移金属酸化物のうち、二酸化バナジウム(VO_2)のナノ構造に関する研究を行っている。VO_2は341Kにおいて結晶構造変化を伴う急峻な金属-絶縁体転移を示す材料であり、Wドープにより相転移が室温で発現すると共に、ナノサイズの領域において金属相と絶縁相のドメインに分離することが報告された強相関電子系材料である。 私はWドープVO_2薄膜の単一ナノドメインの物性を抽出・制御し、従来の薄膜デバイス特性を遥かに凌駕した室温で動作する超高性能スイッチング素子への応用を考え、実現することを目的としている。特に当該年度はVO_2ナノ加工プロセスの確立を行った。一般的に金属酸化物のナノ加工は極めて難しく、特にエッチング等を用いてナノ領域の切りだしを行うにはトップレベルの加工技術とプロセス上のノウハウ習得が不可欠である。具体的にはPulsed Laser Deposition(PLD)とNano Imprint Lithography(NIL)法を用いてVO_2ナノ構造体をAl_2O_3(0001)基板上に作製する。まずPLD法を用いてVWOをAl_2O_3基板上に堆積させておく。作製したサンプルをアセトンに浸して1分間超音波洗浄する。そしてサンプルを100℃のホットプレートで空焼きして余分な水分を蒸発させた後、シランカップリング剤をスピンコーティングする。その後、CF_4エッチング耐性があるリフトオフ用有機レジストをスピンコーティングし、さらにその上にNIL用UV硬化有機レジストをスピンコーティングする。 UV-NILでナノ構造体の形状をプリントした後、反応性イオンエッチング(RIE)を行い、VO_2のエッチングを行う。エッチングが終了したサンプルを90℃に加熱したピロリドンに1時間浸漬させて、残留している有機レジストマスクを除去することでVO_2ナノ構造を作製した。以上のプロセス確立は、強相関電子系の単一ドメイン物性を利用・観測していく上で非常に重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の柱である、ナノインプリントによるVO_2ナノ構造作製プロセスの確立を行えた。また、XRD,SEM,AFMによって、結晶性・表面状態の影響を多角的に評価した。さらにナノインプリントによる電極付けプロセスの確立を行い、VO_2ナノワイヤーの物性測定の準備が整った。これはナノインプリントに関する学会で積極的な情報収集を行い、他大学のチームとの交流を通じて最先端のナノ加工プロセスを習得した為である。また電極パターンニング用のmoldを用いることで、ナノ物性の観測・利用に向けて大きく前進することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はVO_2のドメインを外場によって制御し、ナノギャップを有する電極を用いて検出するということを行っていく。そのためには、Al_2O_3(0001)基板上に作製したVO_2ワイヤー(幅30nm~1μm)の電気輸送特性を詳細に調べ、単一ドメインの挙動を電気的に検出することを試みる。具体的には抵抗の温度依存性を求めて、階段状の金属-絶縁体転移が観測されれば成功である。そのワイヤーの両端に電流注入電極、中間に電圧読み取り電極を配置して、ドメインの動的制御とリアルタイム検出を行う。単純なワイヤー形状ではドメインが一次元的に配列しない可能性もあるので、その場合はくびれを入れた構造を作製し、あるいは基板・膜厚・結晶成長方向等を制御してドメインが一元的な配列をとるように工夫する。
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