研究課題/領域番号 |
11J03967
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
山根 隆史 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター・病害虫研究領域, 特別研究員(PD)
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キーワード | 交尾受容性の低下 / 交尾抑制成分 / オス誘引性の低下 / 射精物 / 性フェロモン / 生体アミン |
研究概要 |
生体アミンは脊椎動物と無脊椎動物の両方における行動的、そして、生理的な変化に影響する生理活性物質であり、中枢・末梢神経系において神経伝達・調節・ホルモン物質として働く。昆虫において、生体アミンは産卵や交尾受容性の変化などいくつかのメスの交尾後行動に影響を与えることが知られている。アカヒゲホソミドリカスミカメにおいてメスの腹部に4種の生体アミン(ドーパミン、オクトパミン、チラミン、セロトニン)直接打ち込み、産卵数、交尾受容性を検証することで本種のメスの交尾後行動と生体アミンの関連性について検証した。その結果、メスの性受容性に影響を与えたものは無かった、この結果は本種のメスの再交尾率が高いことと関係しているのかもしれない。産卵行動についてはオクトパミンのインジェクションが産卵を促し、その効果に濃度依存性がみられた。したがって、メスの産卵行動にはオクトパミンが関係していることが示唆された。本研究の成果は今後、本種でオクトパミンを中心とした生体アミンについて産卵後の脳内の濃度変化やオクトパミン生成遺伝子の発現などを明らかにし、近縁種間の比較研究を行うことで、カスミカメ類のメスの繁殖行動の生理的機構を解明することが期待される。また、アカスジカスミカメのメスは交尾後に性フェロモン放出と交尾受容性の低下が観察され、これらの行動の変化はオスの射精物に含まれる成分によると考えらることから、これらの行動に対するオスの内部生殖器の抽出物の効果を調べた。その結果、オス由来成分は性フェロモンの放出量に影響を与えなかった。この結果からメスの交尾後の性フェロモン放出量の低下は精子など他も要因によるということが考えられる。一方、交尾受容性については打ち込みの後に性受容性の低下がみられた。今後、アカヒゲとの更なる比較研究を行うことで、両種のメスの交尾抑制メカニズムの解明につながることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は動物において普遍的にその行動を制御していると思われる生体アミンに着目し、行動と関係性を示すこと、また、近縁種であるアカスジカスミカメについてもオス由来成分がメスの交尾行動に与える効果を確認することが出来た。ただ、予定していたアカヒゲホソミドリカスミカメのメスにおいて、交尾がメスの性フェロモンの保持量や放出量に与える影響について検証できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
アカヒゲホソミドリカスミカメのメスにおいて、交尾がメスの性フェロモンの保持量や放出量に与える影響を検証し、さらに、アカヒゲカスミカメととアカスジカスミカメにおいて交尾と産卵がメスの活動性と飛翔行動に及ぼす影響の検証を行う。
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