研究概要 |
合成高分子原料の石油資源依存から脱却するため,再生可能資源からの有用な高分子材料の創成が求められている.そこで,本研究は有機触媒を用いて再生可能資源であるテルペン類の精密重合法を確立し,金属残渣を一切含まず環境に低負荷である新規高分子材料を開発することを目的とした.当該年度は,ビニル重合性を秘めながらも重合法が確立されていなかった「α,β-」不飽和エステル基を有するテルペン類にスーパープレンステッド酸を触媒とするグループトランスファー重合法(GTP)を適用し,個々の化合物についての精密重合法の確立を目指した. チグリン酸エステルやセネシオ酸エステルをモノマーとしてスーパーブレンステッド酸を触媒とするGTPを試みたが,開始剤やスーパーブレンステッド酸の構造によらず意図通りの重合は進行しなかった.しかしながら,これらのモノマーと類似した構造を持つアクリル酸エステルやクロトン酸エステル、のGTPは進行して重合物を与えた.特にアクリル酸メチルおよびアクリル酸n-ブチルについては分子量10万を超えるポリマーの合成,生成する高分子の分子量制御,そしてブロックコポリマー化に成功し,精密重合法が確立された.従来は困難であったアクリル酸メチルの精密重合法を確立した点は本研究の重要な成果である.この研究の過程で,重合の開始剤として用いるシリルエノレート化合物のシリル基の構造がモノマーの重合性や重合の制御性に大きな影響を与えることを見出した.この知見は次年度の研究計画へフィードバックする.
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今後の研究の推進方策 |
アクリル酸工ステルのGTPによる精密重合法を確立する過程で,開始剤の分子設計が重合を制御する上で特に重要であることが判明した.今後は,特に開始剤の分子設計に着眼してα,β-不飽和ケト基を有するテルペン類の重合を達成することを目指す.モノマーとするテルペン類の単独重合が困難である場合はアクリル酸エステルやビニルケトン類との共重合により解決を図り,テルペン類からの新規高分子材料の開発牽行う.
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