研究課題/領域番号 |
11J04134
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木村 生 北海道大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 衝動性 / 内側前頭前野腹側部 / ドパミン受容体 / 単一細胞記録 / 3-選択反応時間課題 / ミルナシプラン / BDNF / 衝動性亢進モデルラット |
研究概要 |
採用一年目で得られた成果である「ミルナシプランの衝動性抑制作用の作用機序解明」は当該年度にpsychopharmacologyに掲載された(Psychopharmacology(Ber1).2013,225(2)1495-504.)。 採用二年目における研究計画は「衝動性亢進モデルラットの作製」と「内側前頭前野腹側部による側坐核の神経活動変化および衝動性の制御メカニズムの解明」であった。採用者はまず衝動性亢進モデルラットの作製に取り掛かった。内側前頭前野腹側部に興奮性毒であるキノリン酸を微量注入したところ、衝動性の亢進が観察され、このy状態は少なくとも30日間持続した。 モデルラットの作製が予想よりも早く成功したので、採用三年目に予定していた「衝動性亢進モデルラットに対するミルナシプランの効果の検討」にも着手した。衝動性亢進モデルラットに14日間ミルナシプランを経口投与したところ当該モデルラットの衝動性が抑制された。さらに興味深いことに、ミルナシプランの投与を中止した後も、衝動性抑制効果が持続することを発見した。また、ミルナシプラン慢性投与による持続的な衝動性抑制効果の作用点が、内側前頭前野腹側部において神経栄養因子の一つであるBDNFの生成促進とそれに引き続いて生じる、スパイン再形成と興奮性入力の再構築であることを見出した。 衝動性制御のメカニズム解明実験の方は、単一細胞記録と薬物局所投与実験を組み合わせて行うことが要求されるため、これまでに、単一細胞記録用電極と薬物局所投与用カニューレを同一個体頭部に留置する事前実験を行い、これに成功している。また、実験のさらなる効率化をはかるため、多電極システムを導入し、動作確認に成功している。このように、二年目に計画されていた実験は完遂に至らなかったが、実験の効率化には成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採用二年目における研究計画は「衝動性亢進モデルラットの作製」と「内側前頭前野腹側部による側坐核の神経活動変化および衝動性の制御メカニズムの解明」であった。採用者は内側前頭前野腹側部に興奮性毒を微量注入した衝動性亢進モデルラットの作製に成功し、採用三年目に予定していた「衝動性亢進モデルラットに対するミルナシプランの効果の検討」にも着手し、ミルナシプランの慢性投与が当該モデルラットの衝動性を持続的に抑制することを発見し、その作用点が内側前頭前野腹側部の興奮性入力の再構築であることを見出した。衝動性制御のメカニズム解明実験の方は実験のスピードアップのため多電極システムを取り入れ、その動作確認に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
採用三年目で予定していた、「衝動性亢進モデルラットに対するミルナシプランの効果の検討」は、採用二年目で検討を終えたため、今後は得られた成果をまとめて論文化する作業へと移行する。 採用二年目で検討することが出来なかった「内側前頭前野腹側部による側坐核の神経活動変化および衝動性の制御メカニズムの解明」については、3-選択反応時間課題では行動の統制が不十分であるため、単一細胞記録法を用いた検討に不適切であると判断されたため、より行動の統制がとれた衝動性評価系を新たに立ち上げる必要性が生じた。今年度はその新しい衝動性評価系を作製し、その薬理学的妥当性を検証したうえで、昨年度立ち上げた多電極システムを活用して、内側前頭前野腹側部の衝動性における役割を明らかにする実験に従事する。
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