研究課題/領域番号 |
11J04139
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
許 [キョウ] 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 強磁性形状記憶合金 / メタ磁性形状記憶合金 / マルテンサイト変態 / ホイスラー合金 / カイネティックアレスト現象 / 磁気変態 / 超弾性インバー効果 |
研究概要 |
本研究の主な目的は、メタ磁性形状記憶合金において特定の温度でマルテンサイト変態が停止するカイネティックアレスト(KA)現象の起源を調査し、またKA現象の応用を探索することである。 KA現象の起源を調査するために、東京大学物性研究所のパルスマグネットを用いて、強磁場下組織変化のその場観察を行った。その結果、磁場誘起逆マルテンサイト変態および陥現象を初めて組織写真の変化から確認することができた。この結果はScr.Mat.に掲載された。 また、KA現象の出現は母相とマルテンサイト相の磁気状態と大きく関係あるため、本年度はNiMnInSbの母相およびNiMnGaのマルテンサイト相のそれぞれの磁気特性に関する詳しい調査を行った。その結果、過去の研究ではNiMnInのMn-Mn原子間はフェロカップリングしている報告があるが、Inを半分Sbで置換したNiMnlnSbのMn-Mn原子間はアンチフェロカップリングしていることが分かった。この結果はJ.Appl.Phys.に掲載された。NiMnGaのマルテンサイト相の磁気特性を調べた結果、NiMnIn系とかなりの類似性が明らかとなった。これはメタ磁性形状記憶合金と強磁性形状記憶合金の関係性を解明するのに重要な結果となった。この結果はICOMATで発表し、これから論文も投稿する予定である。 なお、KA現象の応用についての探索では、超弾性の臨界応力が温度にほぼ依存しない「超弾性インバー効果」が実現できた。NiTiなどが代表となる形状記憶合金の5.7MPa/℃に対して、FeMnAINi合金では僅か0.53MPa/℃しかないことが分かった。本合金では安価でありながら、広い温度範囲で優れた超弾性特性が得られることから、建築用制振部材または航空用材料などとしての利用も期待できる。この結果はScienceに掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の通り、カイネティックアレスト現象を解明するのに基礎研究を行い、当初の予想と一致する実験結果が得られた。また、応用の展開にもある程度でき、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今までではNiMn基合金を中心として、カイネティックアレスト(KA)現象の解明に関する磁気特性の基礎研究を行っていたが、今後では、KA現象の普遍性を確かめるため、Co基合金およびFe基合金にて機械特性および磁気特性の系統的研究を行う予定である。また、NiMn基合金の脆性および耐食性の欠点から構造材料としての応用が限られるが、Co基合金およびFe基合金でKA現象を実現させることで、新たな応用の可能性を探索する。
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