研究課題/領域番号 |
11J04184
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小川 浩太 北海道大学, 大学院・環境科学院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 繁殖多型 / 周期性単為生殖 / 染色体放出 / 表現型多型 / エンドウヒゲナガアブラムシ / 成熟分裂 / 極体放出 |
研究概要 |
生物の繁殖戦略の中でも周期性単為生殖(繁殖多型)の進化・維持機構は特に興味深いトピックある。周期性単為生殖では適切な時期に適切な表現型を創出することが非常に重要であるが、その制御機構については、未知の部分が多い。この機構の分子生物学的・発生生物学的制御基盤が解明できれば、周期性単為生殖の獲得・進化についての理解が大きく進むと考えられる。 我々は周期性単為生殖を示しかつゲノム解読が完了しているエンドウヒゲナガアブラムシを材料に、繁殖多型の分子生物学的・発生生物学的制御基盤の解明を目的に研究を進めている。本申請課題ではでは、繁殖多型の発生制御機構の中でも特に重要だと思われるオスの発生制御機構の解明を目標にしている。本種の雄は他のアブラムシ同様、低温・短日条件下で単為生殖により産出される。アブラムシの性決定様式は雄ヘテロXO型であるため、2本のX染色体を持つ親虫が、X染色体を1本、しか持たない雄を単為生殖により産出するには、雄へと成長する卵は、X染色体を1本選択的に捨てる必要がある。この染色体放出は成熟分裂(減数分裂に相当)時に生じること知られているが、その詳細な機構は不明である。 染色体放出が生じる成熟分裂の過程を詳細に観察すれば、その観察像から細胞生物学的にX染色体放出機構を予測出来ると思われる。そこで実験室内で染色体放出を誘導し、その過程を詳細に観察した。先行研究では押しつぶし法による成熟分裂の観察が行われているが、押しつぶし法では細胞内の染色体の位置関係が崩れてしまうため、その知見は十分であるとは言い難い。そこで本研究では全載標本を用いて観察を行った。その結果、極体放出時に極体と一緒にX染色体が放出されることにより、X染色体の減数が生じることが示唆された。さらに、RNA-seq解析によりX染色体放出において重要な役割を担う遺伝子の探索も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実験系を立ち上げ、染色体放出過程を観察し、先行研究で予測されていた機構とは異なる機構でX染色体の放出が生じている可能性が高いことを突き止めた。さらに分子機構を明らかにするために、当初予定していなかった次世代シーケンサーを用いたRNA-seq解析も開始した。これにより染色体放出の分子機構が、当初の計画よりもより早く、より詳しく解析可能である。
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今後の研究の推進方策 |
RNA-seqによりスクリーニングされてきた遺伝子にかんして、さらなる機能解析を行う。また同時に祖先的形質をより多く残した他種アブラムシとの比較解析も行い、染色体放出の進化・維持機構を分子レベルで議論する。
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