研究課題/領域番号 |
11J04266
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
木内 謙一郎 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(PD)
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キーワード | (プロ)レニン受容体 / レニン-アンジオテンシン系 / V-ATPase |
研究概要 |
【目的】(プロ)レニン受容体(PRR)は1回膜貫通型の分子であり、細胞外ドメイン(ECD)、膜貫通ドメイン(TM)、細胞内ドメイン(CD)から構成される。また、ECDはトランスゴルジネットワークで切断を受け、N末端側分子(NTF)とC末端側分子(CTF)に分離することも分かっている。CTFはV-ATPaseに付随することが報告されており、近年の研究からPRRがV-ATPaseの構造と機能に必須であることが明らかになったことから、CTFがV-ATPaseの付随タンパクとして、NTFがレニン・プロレニン結合領域であることが示唆されている。一方で、ECDとTMはV-ATPaseのサブユニットとの結合に必須であるとの報告もなされ、PRRの構造による機能はまだ十分に明らかにされていない。 【方法】我々はPRR欠損細胞に全長PRR(FL)、CTF、ECD+TM、および切断部位に変異のあるPRR(FM)を過剰発現し、V-ATPaseの構造と活性について、サブユニット発現と酸性オルガネラに蓄積するライソトラッカー染色(LT)を用いて検討した。 【成績】内因性にPRRを発現している細胞へのFLの過剰発現はV-ATPaseサブユニット発現の変化やLT染色の変化は認められなった。PRR欠損細胞ではV-ATPaseサブユニットの発現低下とLT染色低下を認めたのに対し、PRR欠損細胞にFLを過剰発現したところ、V-ATPaseのサブユニット発現の回復とLT染色を認めた。 同様のV-ATPaseサブユニット発現の回復とLT染色性は、PRR欠損細胞に対するECD+TMおよびFMの過剰発現で認められたのに対し、CTFの過剰発現では認められなかった。 【結論】PRR欠損細胞にPRRを過剰発現させることで、V-ATPaseの構造と機能をレスキュー出来ることが明らかとなった。PRRのECDおよびTMが、V-ATPaseの構造と機能に重要であることが示唆された。今後PRR切断酵素の発現を変えることによるV-ATPaseへの影響を検討する方針である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PRR欠損細胞へのPRR過剰発現形の確立と、様々なコンストラクトのPRRベクターの作成がおおむね順調に進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
In vitro実験として、PRR切断酵素のV-ATPaseへの影響を検討する方針である。また、内因性にPRRを発現している細胞において、PRRの過剰発現がV-ATPaseの機能に影響を与えないと考えられたことから、組織特異的なPRR過剰発現マウスとレニン過剰発現マウスの交配により得られるダプルトランスジェニックマウスを解析し、PRRの組織レニン-アンジオテンシン系に与える影響を検討する方針である。
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