研究概要 |
本研究は、DNAのナノ構造と核酸塩基に結合する小分子を利用することで、多次元空間における特定のアドレスに電子スピンを配置するmolecular-based nanotechnologyを目的とした研究である。これまでにDNA中のミスマッチ塩基対部位に結合する小分子に安定ラジカル分子をコンジュゲートさせた分子を利用することで、DNA二本鎖上の特定のアドレスに電子スピンを配置することに成功していたが、新たにDNAの相補的塩基対を利用して一次元DNAナノ構造をテンプレートとして、多次元空間上の特定のアドレスへ電子スピンを規則的に配置することに成功した。ナノスケールなDNA上に整列した電子スピンアレイは、ラジカル電池、動的核分極のためのスピン集積材料や、DNAナノ構造上に規則的に配置された電子スピンの酸化還元能を利用した化学反応場としても期待出来る。本研究で用いる電子スピン含有小分子は、G-Gミスマッチに結合するNaphthyridinecarbamate dimer(NCD)を骨格とし、2,2,6,6-tetramethylpiperidine N-oxide (TEMPO)及びNitronylnitroxide(NN)をコンジュゲートしたNCD-TEMPOとNCD-NN、また、A-Aミスマッチに結合するNaphthyridineazaquinolone(NA)を骨格としたNA-TEMPO,NA-NNの四種類である。二種類の異なる電子スピンと核酸塩基結合小分子(NCD-NNとNA-TEMPO)を利用して、一次元上に伸長したDNA上に、周期的な一次元電子スピンアレイを構築した。一次元電子スピンアレイの構築のテンプレートとなるDNAは、1)自発的には二本鎖を形成しない、2)各小分子結合サイトを含み、のりしろとなるoverhang領域を有する設計となっており、NCD-NN及びNA-TEMPOの両方の小分子を添加した場合にのみDNAは一次元上に伸長し、一次元電子スピンアレイの構築に成功した。
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